舌

舌

舌いつも上顎につけ厚朴の花

卯の花や腸内環境ととのへて

読まれない子音のありて聖五月

芍薬の丸みのなかで抱き合へば

夏めいてンより始まる名前かな

唇を突き出す音で結葉と

入梅や湯船のお湯を少し飲む

乾杯のときの目力エスカルゴ

くふくふと青梅を煮る手もとかな

幸福やトマトは出汁を吸ひづらく

掬つても掬つてもまだ夏の月

あれは蜥蜴これはマンゴー烏龍茶

直線も曲線も有る扇かな

峰雲の反対側を目に当てて

泉噴く薬味たつぷり出汁カレー

あまつさへ虹あまつさへ倦怠期

大鷭のやうに張り出す乳房かな

不幸にも流行り廃りや大西日

みちのくに生まれぢやぶりと桃を食む

さんずいに舌と書く字よ露涼し