第3話 《記憶》勇者
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「シラタマ! アリアとジャックを守ってくれ」
『なんでめぅ? 我もあるじと一緒に戦うめぅ!』
「お前が守らなければ、アリアとジャックが残っている魔神の手下にやられちまう。お前が頼りなんだ。魔神は俺とラグに任せろ。すぐに終わらせる」
——
勇者パーティーの仲間のうち、立っているのは俺と
何時間にも渡る壮絶な戦いによって、背後に見える魔神城は崩れ、もう城の形を成していない。
魔神との戦いに、どれほどの時をついやしたか。
だが、それも終幕を迎えようとしている。
——俺たちは魔神を追い詰めた。
「魔神よ、これで終わりだな。諦めろ!」
俺は神剣の
「くっ……調子に乗るなっ……人間如きが、わ……れを、倒せると思うな……」
悪態を吐く魔神の姿は、膝から崩れ落ち、いつ頭がグシャリと地面についてもおかしくない。
胸を押さえながら呼吸しているその姿は、息をするのさえ苦しいのだろう。
次の一撃で悪あがきもできないくらいに、俺がきっちりトドメを刺してやる。
「ラグ! 俺の神剣に最大級魔法を送ってくれ」
「わかった!」
俺がそう言うと、後ろで控えていた大賢者であり俺の幼馴染でもあるラグナレクが最大級魔法を詠唱する。
《ライトニングボルテックス》
「くっ……」
ラグが残していた最後の魔力も尽きたのだろう。詠唱を終えると、片膝をつき意識を保っているのがやっとな様子。
ありがとうなラグ。あとはゆっくり休んでくれ。
お前が付与してくれた渾身の魔法で、俺がトドメを刺すからな。
俺は神剣を天に向かって
空にはラグが放った最大級魔法の大きな
柄を握るその手に衝撃が走ると同時に、神剣は凄い勢いで雷を吸収していく。
雷を腹一杯に食べた神剣が神々しく輝いている。
それを見た俺は、にやりと口角を上げた。
「よしっ! これで終わりだ」
俺は雷をまとった神剣を、魔神に向かって思いっきり振り下ろした。
とどめの一撃をくらった魔神は、重力に逆らう事なく頭から地に向かって倒れた。
魔神は地に伏したままぴくりとも動かない。
「終わりだな」
俺は踵を返し魔神に背を向けた。
——次の瞬間
「アレクッ!!」
「ん?」
ラグが必死な形相で俺を見ている。
「どうし……っ!? ぐっ!?」
体に強い痛みと衝撃が走った途端、俺の体は宙を舞いラグから離れどんどん遠ざかっていく。
だがこの程度の攻撃など、俺にはなんのも意味がない。
「魔神よ? 最後の足掻きがこれか? こんなの余裕でっ!? はっ!?」
なんだこれ!? 体が動かない!
さらには俺が身に着ける最強装備が一つ一つ体から離れ散り散りに飛散していく。
「ふぇ!? なっ!?」
俺に一体何が起こってるんだ!?
「アレクーーーーッ!!」
ラグが必死に俺を呼んでいる。
応えようにも俺は体の自由も奪われ、ただ糸の切れた凧みたいに宙を舞い遠くへと飛ばされていく。
そんな無様な俺の姿を見た魔神の高笑いが微かに聞こえた。
『哀れな勇者よ。人間という短い寿命で、ここまでの強さを手に入れたというのに、一瞬で
魔神が息絶え絶えに語る言葉は失われゆく意識を通過する。遠くへと飛ばされながら意識を失うも、ラグの悲痛な表情が俺の見た最後の光景だった。
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——なっ、なんなんだ今の映像は!?
殴られすぎて俺の脳がおかしくなった?
それとも一瞬気絶して夢を見た?
……にしても、すげぇリアルな映像だった。
その映像の中で俺は、
強そうな装備を着用し、魔神と呼ばれる何かと
長い間映像を見ていたようだが、どうやらそれは一瞬だったみたいだ。
まるで時が止まったかのよう。
俺を殴り飛ばしたダークベアが、再び俺に向かって突進してきているのが見える。
……が。
俺はそれを避ける事ができない。
「ぐはっ!」
体当たりされた俺の体が吹き飛ぶ。
もう限界だ。
夢なのかどうなのかは分からないが、さっきの映像で見た、強そうな俺だったらダークベアなんて一瞬で倒せるだろうな。
なんてふと考える。
そんな事を考える俺はもう……色々限界なんだろう。
映像で見た……。
「神剣が俺にも使えたら……」
そう思った瞬間。
体から光が放出され、それが剣の形となり俺の手に収まる。
「これって……」
夢? で見た神剣ってヤツの姿にそっくりなんだが。
それをダークベアに向かって横に一閃すると、その体は真っ二つに切断され胴体が上下で泣き別れとなった。
「ななななっ、なんだこれぇー!!」
この後、俺は意識を失った。
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