第11話 フレンチレストランの悲劇 ②
香織と涼介は、ジャン・ルイの作業台に置かれたノートを調べていた。ノートには、新しいワインのブレンド方法についての詳細が書かれていたが、何ページかが破り取られていた。
「このノートに書かれたレシピは非常に精巧だわ。」香織がノートをめくりながら言った。
「彼はただのソムリエではなく、ワインのブレンディングにも精通していたんだね。」涼介が答えた。
涼介はノートの内容をじっくりと読み込み、作業台の周囲を調べ始めた。彼はジャン・ルイが頻繁に使っていたワインのサンプルを見つけ、それぞれの味を確認し始めた。
「このサンプルの一部に、明らかに異常な味がするものがある。」涼介が眉をひそめながら言った。「ジャン・ルイが試していたブレンドが失敗したのか、それとも誰かが意図的に混入したのかもしれない。」
香織はそのサンプルを慎重に調べ、「これは意図的なものかもしれない。誰かが彼のブレンドを台無しにしようとした可能性があるわね。」と答えた。
「それにしても、誰がこんなことを?」涼介が呟いた。
香織と涼介は、レストランのスタッフに話を聞き始めた。ジャン・ルイの死について何か知っているかどうか、そして誰が彼に恨みを抱いていたのかを探るためだ。
アリス・モンブランは涙を流しながら、「彼はとても厳しかったけれど、私にとっては素晴らしい師匠でした。」と語った。しかし、香織は彼女の目の動きに不安を感じた。
「アリスさん、ジャン・ルイのノートを見たことはありますか?」香織が尋ねた。
「はい、彼が新しいブレンドについて書いているのを何度か見ました。でも、彼はいつもそれを私から遠ざけようとしていました。」アリスは答えた。
「最近、何か変わったことはありませんでしたか?」涼介が尋ねた。
「実は、ジャン・ルイが何かを隠しているような気がしていました。彼の態度がいつもと違ったんです。」アリスが小声で答えた。
オーナーシェフのフランソワは、ジャン・ルイとは長年の付き合いがあった。彼は、「ジャン・ルイは私たちにとって欠かせない存在だった。彼がいなくなって、どうしたらいいか分からない。」と述べた。
「フランソワさん、ジャン・ルイとは何か意見の違いがあったのですか?」香織が尋ねた。
「そうだな、彼の新しいワインブレンドについては意見が対立することがあった。私は伝統的なレシピを守りたいと思っていたが、彼は新しい挑戦を求めていた。」フランソワが答えた。
「その対立が大きな問題に発展することは?」涼介が続けた。
「いや、それほどではない。仕事上の意見の違いに過ぎなかったと思う。」フランソワはため息をついた。
「しかし、最近ジャン・ルイの態度が変わっていたと聞いています。」香織が鋭く問い詰めた。
フランソワは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに真剣な顔つきに戻った。「確かに、彼は何かに悩んでいたようだった。しかし、それが何かまでは分からない。」
メートル・ド・ホテルのピエールは、レストランの運営を取り仕切っていた。彼は、「ジャン・ルイとは時々意見がぶつかることがあったが、それは仕事の範囲内のことだった。」と述べた。
「ジャン・ルイのブレンド方法について、あなたはどう思っていましたか?」香織が尋ねた。
「正直に言えば、あまり好意的には見ていなかった。彼の方法はリスクが高いと感じていたんだ。」ピエールが答えた。
「具体的にはどういう点で?」涼介が尋ねた。
「彼は非常に独創的だったが、その分失敗も多かった。私は経営面でそれが問題になると心配していた。」ピエールが言った。
「それは、経営者として当然の心配ですね。でも、最近の彼の行動に何か気になる点はありませんでしたか?」涼介が続けた。
「うーん、特にないが、彼が何かを隠しているような感じはした。」ピエールは少し考え込んで答えた。
パティシエのレオは、スイーツ作りに情熱を持っていた。彼は、「ジャン・ルイとはあまり関わりがなかったけれど、彼の死には驚いている。」と述べた。
「レオさん、ジャン・ルイのワインブレンドを使って新しいデザートを作ろうとしていたと聞きましたが?」香織が尋ねた。
「ええ、彼のブレンドを使ったデザートのアイデアは素晴らしかった。でも、最近はうまくいっていませんでした。」レオが答えた。
「うまくいかなかったとは?」涼介が尋ねた。
「彼のワインブレンドが何か変わってしまったんです。味が以前と違って、使えなくなってしまった。」レオが説明した。
「それについて彼と話したことは?」香織が続けた。
「話しました。彼は何かに非常に困っている様子でしたが、それが何かは教えてくれませんでした。」レオが答えた。
香織と涼介はこれらの証言を基に調査を進め、ジャン・ルイの死の真相に迫っていく。各人物が抱える動機や背景を掘り下げながら、二人は事件の核心に迫る手がかりを見つけ出す。
香織と涼介は、ジャン・ルイのノートの欠けたページが事件の鍵を握っていると確信した。ノートの内容を基に、彼が新しいブレンドに関して何を試みていたのかを探り、次の手がかりを追うことにした。
「このノートの欠けた部分を見つけることが重要ね。」香織が決意を込めて言った。
「そうだね。それが見つかれば、事件の真相に一歩近づくことができる。」涼介も同意した。
二人は、レストラン内外で更なる調査を開始し、ジャン・ルイのブレンド方法やその背後にある秘密を解明するために奔走するのだった。
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