第7話 和菓子職人の秘密 ②
薄暗い倉庫の中で、埃が舞い上がり、古びた木の棚が並んでいた。香織と涼介は慎重に足を進めながら、懐中電灯の光で周囲を照らしていた。倉庫の奥からはかすかな物音が聞こえ、その音が緊張感を一層高めていた。
香織は小声で、「何かがここに隠されているはず…。」と呟きながら、棚の下を覗き込んだ。
涼介は懐中電灯を持ちながら、隅々まで光を当てた。「ここに何かがあるはずだ。音のする方に近づいてみよう。」
香織は慎重に棚の下を探し、やがて小さな箱を発見した。「涼介、ここに小さな箱があるわ。」
涼介は箱を取り出し、中を開けると、そこには一郎のレシピノートの残りのページが無造作に詰め込まれていた。「これが一郎さんのレシピノートの残りか…。」
香織は驚きの表情で、「でも、どうしてこんな場所に?何かがおかしいわ。」
その時、倉庫の奥から再び物音が聞こえた。香織と涼介は顔を見合わせ、警戒しながら音のする方へ向かった。暗がりの中、懐中電灯の光が一人の男を捉えた。男はサングラスをかけ、何度も店の周りをうろついていた人物だった。
「出てきてください!」香織が強く声をかけると、男は観念したように姿を現した。彼は背が高く、顔には緊張の色が浮かんでいた。
「あなたがレシピノートを盗んだのですね?」香織が詰め寄る。
男は抵抗しようとしたが、最終的には観念し、「そうだ、俺がやった。でも、毒を盛ったのは俺じゃない。」と白状した。
「あなたの名前は?」涼介が尋ねる。
「山田だ。俺はただ、一郎のレシピを手に入れたかっただけだ。」男はそう答えた。
香織は厳しい表情で、「それでも、あなたの行動が一郎さんの死につながったのです。詳しい話を聞かせてもらいます。」
山田は深いため息をつき、事情を話し始めた。「俺は一郎の技術に憧れていた。彼のレシピを手に入れれば、俺も成功できると思っていたんだ。だから、彼のノートを盗む計画を立てた。」
「でも、毒を盛ったのは別の人物だと言いましたね?」香織が問い詰める。
山田は頷き、「そうだ。俺はただノートを盗むだけだった。毒なんて使っていない。」
香織と涼介は顔を見合わせた。山田の話から、毒を盛ったのは別の人物であることが判明した。彼らは再び店に戻り、改めて職人たちの中から犯人を探し始めた。
香織は山田に向き直り、「あなたの証言は重要です。警察に同行して、全てを話してください。」
山田は諦めた様子で頷き、「わかった。全て話すよ。」
香織と涼介は山田を連れて倉庫を出た。外の空気はひんやりとしており、倉庫の中での緊張感が少し和らいだ。
「これで、少しは真相に近づけるわね。」香織は涼介に微笑んだ。
「そうだね。でも、まだ解決するべきことがたくさんある。」涼介も微笑み返した。
二人は山田を連れて警察署へ向かい、そこでさらに詳しい証言を聞くことにした。事件の全貌が少しずつ明らかになっていく中で、香織と涼介の探偵としての鋭い洞察力が試されることになる。
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