第3話 高級レストランでの殺人 ③
香織と涼介は、手がかりを求めて佐藤健吾の行方を追った。佐藤は元料理人であり、かつて「ラ・ベルエポック」で働いていたが、小林太一の辛辣なレビューが原因で解雇されていた。
「彼が動機を持っていることは確かね。」香織は考え込みながら言った。「でも、どこにいるのか見つけなければ。」
その時、涼介がメモを取り出した。「この近くに彼の親しい友人が住んでいると聞いたことがある。まずはそこから探してみよう。」
二人はその住所に向かい、佐藤の友人である山田という男性に会った。山田は驚いた表情で彼らを迎えた。「佐藤のことで何か?」
「彼に会いたいのですが、どこにいるかご存知ですか?」香織が尋ねた。
山田は困惑した様子で答えた。「彼は最近、何度か私のところに来ていましたが、具体的な居場所は教えてくれませんでした。ただ、彼が何かに追い詰められているような感じでした。」
涼介がさらに質問を続けた。「最後に彼と話した時、何か変わったことは言っていませんでしたか?」
山田はしばらく考えた後、「確か、彼が新しいレストランの開業準備をしていると言っていました。でも、場所や名前は教えてくれなかった。」
香織はそれを聞いて、「新しいレストラン…それが手がかりかもしれない。彼がどこで新しい店を開く予定かを調べましょう。」
香織と涼介は地元の飲食業界に詳しい情報提供者に連絡を取り、佐藤が新しいレストランを開こうとしている場所を突き止めた。それは、港町の外れにある古い倉庫を改装した小さなレストランだった。
二人はその場所に向かい、慎重に中を覗き込んだ。そこで見つけたのは、佐藤が熱心に料理を作っている姿だった。
「佐藤さん、少しお話を伺いたいのですが。」香織が声をかけると、佐藤は驚いた表情で振り向いた。
「あなたたちは誰ですか?」彼は警戒心をあらわにした。
「ミタムラ&フジタ探偵事務所の三田村香織と藤田涼介です。小林太一さんの事件について調査しています。」香織が名乗ると、佐藤の顔色が変わった。
「小林太一?あの男がどうした?」佐藤は険しい表情で問い返した。
「昨夜、彼がラ・ベルエポックで毒殺されました。あなたもその場にいたことがわかっています。」涼介が鋭く指摘した。
佐藤は一瞬黙り込み、その後深いため息をついた。「確かに、俺はあの店に行った。だが、殺すつもりはなかった。ただ、彼に話をしたかっただけだ。」
「でも、トリュフリゾットに毒が仕込まれていたことは事実です。あなたがそれを仕込んだのではないですか?」香織が問い詰めた。
佐藤は目を伏せ、しばらく沈黙した後、「あのリゾットに使われたトリュフは…俺が持ち込んだものだ。」
「やはり。」涼介がつぶやいた。「でも、どうしてそんなことを?」
「俺のキャリアはあの男のせいで台無しになった。復讐のために、あの特別なディナーに毒を仕込む機会を狙っていた。」佐藤は苦しそうに話し始めた。
「だが、やっぱりやめようと思ったんだ。結局、俺は毒を使わずに、ただ彼に真実を話してやろうと思っただけなんだ。」
香織と涼介は顔を見合わせた。佐藤の言葉に信憑性があるかどうかを見極めるため、さらなる調査が必要だと感じた。
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