試験開始

午後5時に奈緒とケイゴと合流した。私が食後にゆっくりしていたカフェに2人が訪れるという形で。

そして2人は手を繋いで現れた。

「そういうこと」らしい。


美「えー奈緒良かったね!」

奈「うれしい!ありがとう!」

ケ「いやー、報告が遅くなってすまん」


この時一番恥ずかしそうなのはケイゴだった。正直ちょっぴり羨ましかったけど、2人から感じた幸せオーラが優しくて私もなんだかニコニコした。


私達3人は気を取り直して「東京ツチノコ会議」を久しぶりに開催した。本当にここ数日が長く感じた。よくよく考えると寝ている間も意識があるようなものなのだから、そりゃあ1日も長く感じるというものである。


美「何かさ…私呼ばれてると思うんだよね」

奈「何に?変なこと言わないでよー」

ケ「でも何で美鈴だけ夢のテイストが少し違ってきてるんだろうね」

奈「心当たりはあるの?」

美「…実はちょっとあるんだよね」


3人という人数で一緒にいると、細かい計算式は私には解らないが「どこかのタイミングで全員同時に瞬きをする」という事がいずれ訪れるはずである。

「たまたま」オーテモリのカフェで夢の話をしている最中、その時が訪れたのだろう。ハッキリしない言い回しになるのは、定点カメラがあるわけでもないし、誰かが映しているわけでもないので確認のしようがないからである。


ただ…。何故か入眠をしたわけでもないのに私達は「パラレルワールド」に移動していた。1つ言えるのは、ぬるっと「あ、今全員一緒に瞬きをしたな」と思った直後にワープしたこと。これに間違いはなかったと思う。


それが引き金となったのか…。だとしたら今までの夢の入り方とは違うわけであり、私は「フェーズが変わった事」をいよいよ本当に…「本当に」受け入れなければいけない時が来たなと、背筋を少し凍らせたのだった。


その時、私達はオーテモリのカフェから緑地帯の方に「連れていかれて」いた。そして突如としてツチノコ達による「試験」が始まったのだ。


森の広がるスペースからオーテモリの施設に入るためのエスカレーターが建物の外にある。そちらの方面に追いやるように、私達の後方から悲鳴にも聞こえる経験したことのない異音がし始めた。例えるなら猫よけを数倍以上「高音」にした不快音とでも言うべきか。


その音の不快指数が徐々に高くなっていく。私は耳を塞いでなんとか耐えていたが、奈緒がたまらず耐えられなくなりエスカレーターの方に走り始める。


絶対に行かないほうが良いとは分かっていた。だがケイゴは勿論のこと、私も一緒に奈緒を追いかけて商業施設の入り口の方へ向かった。

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