オーテモリ

2013年、東京は大手町に新しく「都市を再生しながら自然を再生する」をコンセプトにした、OOTEMORIという商業施設が誕生した。植物は200種類以上、鳥類、昆虫類などもかなりの数が確認され、コンクリートジャングルと化している大手町周辺での「オアシス」的存在として、近くにある皇居等と共に地域の緑化に貢献している。また開業当初から周辺の生物の命の源としてはもちろんの事、日々閉塞された社会で奮闘するサラリーマンやOLの癒やしの存在としての「役割」も担っている。現にとある有名なインターネット検索エンジンの施設レビューの欄には「満員電車で揺られた後に目に入ってくる緑に癒やされる」や「いつもリフレッシュさせてくれてありがとう」などと言うように、そこに「在り続けてくれるもの」として存在感を示し、働く人々の中に必要不可欠な支えとして刻み込まれている様子である。


半ば乱暴にスタートした探索初日にふと立ち寄ったOOTEMORI。ニュース等で聞いたことがある程度だったのだが、思っている以上に緑が深く、ビル街に突如現れるその異世界感、存在感に少し圧倒さえされてしまう。と同時に「ここには本来、山にいると言われているツチノコが本当にいるかもしれない」と大袈裟ではなく思った。


そしてもう1つ。「緑の重要性」も感じさせられた。それは「私」にとってなのか「人間」にとってなのか、はたまた「ツチノコ」にとってなのかは正直分らない。ただ、一連の事が起きる前にこの場所に来ていたとしても、この緑を目にして「突き動く」感じは無かった気はする。


私は東京生まれで今まで東京都民として暮らしてきた。やはり東京都、それも23区内においては、他の都道府県に比べ自然が明確に少ないだろうし、ここで言う「緑」と身近に触れる機会というのは、そう多くはない。

なのでこれは私個人としてだが、自然や緑に対する「美的感覚」が疎い。砕けて言えば、大雑把とでも言うべきか。それは言い換えれば生きるうえで緑を必要として来なかった、ということでもある。そんな私でも「緑が絶対関係してくる」と思うくらいの「雰囲気」をOOTEMORIは有していた。


とはいえ…ここまでは完全に私の妄想であり、明らかに不確定要素が多すぎる。

なんだかんだ私は、他の二人よりも割とファンタジー思考があるようなので、先述したような発想にもなるのだが、ケイゴと奈緒は「確かなこと」が全くないというのが早くもモチベーションの低下に繋がっているらしい。

この日一緒に行動していて、私はその事に薄々気付いていたが、思い浮かんだ打開策が現実味をあまり感じない手段だったがために提案するのを少し渋っていた。ただ私の「ない頭」でいくら絞り出したところで、他にはもう全く出てこなそうだったので、二人に言った。


「巻物を実際に見せてもらう事って出来ないのかな?」


可能性はゼロでは無いだろうが、そこそこ大きいコミュニティの主になっている例の都市伝説系ユーチューバーが取り入ってくれるとも正直思えなかった。そもそもとして、そのユーチューバーがそれを所持しているわけでは無いと思われる。なのであえて提案しなかったのだがその反面、正直巻物は気になっていた。ちゃんと一回見ないことには始まらない、そんな思いもあった。なのでアクションを起こすのには丁度良い機会だったのかもしれない。


そして私の経験上、この類の事案がすんなり行くときは「何か」あるときだ。引き寄せの法則と言うと少し大袈裟かもしれないが、大概「別れ道」「分岐点」とはそういうものである。結果、巻物に関して「思った通りにすんなり」進んでいくことになり、私は少し身構え始めた。

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