偶然が重なるとかいう「ロマン」

東京23区の某所、マンションの建設現場から見つかった謎の巻物。そこにはツチノコについての言い伝えと共に、「未来の江戸の地中を蜘蛛の巣のごとく走る籠」というニュアンスで、現代の東京の地下鉄と思われるものについて記されていた。そして最後のまとめ文と思われる部分を現代語に訳すとこうなる。

「未来の江戸(東京)において、地下に張り巡らされた蜘蛛の巣(地下鉄のトンネル)の中でツチノコの存在に辿り着いてしまった者は、世紀の発見の代償として全てを失うだろう」と。



さあ、今回の都市伝説。

あなたは…信じますか?

信じるか信じないか…


と言うわけで、今回の動画はここまで。

ご視聴ありがとうございました


ーーーおわりーーー


ケイゴが言っていた都市伝説系ユーチューバーの動画を見た。もちろん作り手側の意図や手腕もあるに違いないが、都市伝説としてはものすごく信憑性が高そうな気がする。そして動画の中で、発見に近づくヒントというわけではないが「こういう不思議体験や発見などは、得てして偶然が重なって有りもしない事が起きるのがロマン」みたいなシーンがあった。

改めて正気かどうかを確かめる。分かってはいるが、ツチノコという「空想」に躍起になっても仕方ない。


実は私はツチノコについての知識があまりない。なので、ここに来て少し調べることにした。ざっくり言えば日本にいるとされている、未確認動物(UMA)の1つで「鱗がある蛇」のような生き物(ヘビには本来鱗はない)である。あとはなんか日本酒が好きとかいうおじさん的な好物もあるらしい(?)


そうこうしているうちに「一回目」の週末を迎えた。とはいっても何の手がかりもないし、その正体に接近するイメージすらまだないので、一先ず作戦会議をすることにした。

「分かってはいる」が、私は「型から入りがち」である。最初の会議をする場所にすらこだわる。鉄道に関しての知識はそんなに無いが、父が電車好きということもあり「大手町」という駅が東京の地下鉄の中心だ、という知識だけはあった。事実「大手町駅」には5路線が乗り入れており、紛れもなく東京都における地下鉄の中心だ。なので私達は当日、大手町駅近くのカフェに陣取り、第一回の作戦会議を開始した。そして「第一回ツチノコ会議」の結果、幾つかの決め事と最初に探索する駅が決定した。


①毎週土曜日の正午に集合すること

②その際には地下鉄の一日乗車券を購入してくること

③大手町から始める

④基本的に探索の起点は大手町


ちなみにここで上記「一日乗車券」について少し詳細を記しておく。

東京を走る地下鉄は大きく分けて2つに分類される。東京都が東京都交通局として運営する事業の1つ「都営地下鉄」と、当初は営団地下鉄と言う名前で親しまれ、今は社名を「東京地下鉄株式会社」とする、通称「東京メトロ」の2つだ。そしてこの2社の地下鉄には「1日乗車券」なるものが存在しているのだが、基本は別々の物として都営線は700円、東京メトロは600円で各駅にて販売されている。補足だが、都営の1日券は「都営バスの1日券」などを含み、東京メトロの券は購入から24時間使用することが可能だ(基本的に鉄道会社などの一日乗車券は日付単位であるので「日付をまたいで24時間使える」というのはかなり珍しいといえる)。


またそれらとは別に両社の「地下鉄」のみ乗り放題の「共通一日乗車券」というものが900円で販売されているのだが、今後はこの券を購入したうえで集合する事になった。この券の有効期限は日付単位(当日失効)だが東京の地下鉄を縦横無尽に駆け巡りたい「東京ツチノコハンター」の私達にはもってこいの券であるといえよう。

こんなにも一日乗車券について説明をしているのには理由がある。実はこの「一日乗車券」の小さな仕様の違いが私の運命を大きく変える事になるからだ。


都心にあるカフェの数は計り知れない。同じ系列のカフェがその駅の近くに何件もあることだってザラだ。そしてそれは数百メートルしか離れていないのに「人」や「雰囲気」が全く異なる事だってある。商業施設やオフィスが入るビルの地下、少し足を伸ばせば東京駅も近い、来店する人の「公私」が入り混じる店内。忙し(せわし)なくも何だかキラキラしていて、着飾る事を窮屈に感じさせない雰囲気のある某カフェでの「会議」を終え、お店を出た時に私は宣言した。


美「よし!今から大手町探索!スタートします!」


ケ「…何するの!?」

奈「…何が!?」


同志達による息のあったツッコミが私に浴びせられる。こんなラフな調子にも関わらず、私達はこの後「東京の地下に張り巡らされた蜘蛛の巣」に「しっかり」囚われていく事になる。

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