第8話 絆レベル
初めてユグユグにログインし王都ヴァルムスを歩き回った翌日。
朝起きてすぐにななちゃんにLimeでメッセージを送った。
「誘ってくれてありがとう……っと、よし。」
送った二分後にどういたしましての返事と近況報告が来た。
ななちゃんは既にレベル3になったらしい。
私は街を歩き回ってただけだからまだレベル1だ。
グズグズしてられないね。そうだ、ななちゃんに相談したいことあったんだ。
私の相談事をななちゃんに聞いてもらうことにしたのだった。
☆☆☆
「おはようございます、アイちゃん様!」
ログインすると目の前にエーリルがいて元気な挨拶をくれた。
「おはようエーちゃん。ごめんね、一人にさせちゃって。」
「一人は慣れているので全然大丈夫です!」
そうは言っても一人待ち続けるのは退屈だろうし寂しさもあるだろう。
だからななちゃんに相談してみて教えて貰ったことを試すことにした。
「エーちゃんフレンド登録しない?」
「フレンド登録ですか?」
エーリルを肩に乗っけながら、メニュー画面を開き教えてもらった手順でフレンド登録を行い無事エーリルとフレンド登録が出来た。
それからメニュー画面のオプションを開きそこにあるLimeと共有というボタンを押す。
この機能は自身のフレンド一覧をLimeアカウントと共有して、ゲームにログインしていなくてもフレンドにメッセージを送れるとても便利な機能だ。
流石制作会社の親会社がLime株式会社ということだろう。
そしてLime株式会社は近年AI機能の開発にも力を入れており、その技術をふんだんに使用したユグユグのもう一つのフレンド機能としてNPCとのフレンド登録が可能であり、Limeでゲーム外からでもお話出来るという機能だ。
ただ、お話できないNPCはダメみたい。
「はい、これで私がログアウトしていてもお話出来るからエーちゃん寂しくないね!」
「アイちゃん様………うぅ、ありがとうございましゅ!わ、私とでも嬉しいでしゅう……ぐすっ」
エーリルは泣きながら私の頬っぺたに抱きついてきた。
やっぱり一人で待つのは寂しいだろうし、出会ってからまだ期間は短いけど、昨日一日一緒に遊んでもう大切なお友達だからそんな思いさせたくなかったのだ。
「フレンド登録してくれた方はアイちゃん様が初めてでしゅ……ぐすっ」
「初めてってことは、前にもこんな風に初心者さんのお手伝いをしていたってこと?」
「はい……何度かありますが、皆様会話は必要最低限でした。ほとんど話すことなくお別れする方もいました…。」
「そうなんだ…。」
エーリルの運の悪さもあるかもしれないけど、こんなに可愛いくて優しい子なのに全然お話する事無くお別れなんて。
「もう大丈夫、これからはエーちゃんに寂しい思いはさせないから!」
「アイちゃんしゃま……、ありがどうございましゅううう〜!」
【エーリルの絆レベルが10になりました。】
突然目の前にウィンドウが現れびっくりした。
なんだろう、絆レベル?
エーちゃんと仲良しになれたってことなのかな?
メニューを開いてステータスを見てみても特に変化は無い。
隠しステータスなのか、目に見える所には無いけど確かにエーリルとの絆は確実に上がったということだろう。
「エーちゃん、冒険者ギルド行こっか。」
「はい、行きましょう!」
エーリルが泣き止んだタイミングを見計らって、この街の冒険者ギルドへ向かった。
☆☆☆
エーリルと冒険者ギルドへ向かう最中に色々教えて貰った。
冒険者登録をするためにこれから冒険者ギルドへ行くのだが、必ずしも登録しなければならないという訳ではないらしい。
登録と言ってもジョブが冒険者になる訳ではなく自治組合へ参加し組合員となることであり、ギルドの役割としてはクエストの受注や発注、討伐モンスターの素材買取等々、組合員へのサポートが主な役割である。
ランク制度もあり、ギルドが組合員の強さやクエスト達成数などを加味した評価をもとにランク付けし、個々の強さや長所にあったクエストを斡旋をしている。
「お金に困ってもギルドに登録しておけばクエストを紹介してくれたり、どこも買い取ってくれない様なモンスターの端材なんかも買い取ってくれるんですよ。私は森で拾ったどんぐりや栗を買い取ってもらいました!」
「本当になんでも良いんだね…。」
自慢げに語るエーリルが可愛い。
絆レベルが上がったからなのかエーリルは楽しそうに色んなことを教えてくれた。
そんな姿を見てあいも楽しみながら聞いていた。
☆☆☆
冒険者ギルドには所狭しとプレイヤーがいた。
談笑している人や掲示板の前で悩んでいる人、受付嬢のNPCにナンパしている人など様々である。
そんな冒険者ギルドにて――。
「おい聞いたか?この前『
「このワールド最強プレイヤーパーティでもまだそこなんだな。」
「三ヶ月ちょっとあれば誰かがSランクに到達すんじゃねぇかって思ってたんだがな。」
「Sランクは無理だろ。その五芒星剣たちが束になってもNPC冒険者に攻撃を当てることすら出来なかったんだからな。」
「あ、それ見た!調子に乗ってSランク様に喧嘩売ったやつ。」
「あれは傑作だったな!トッププレイヤーだからって見下した態度にイライラしてたんだ。ボコボコにされててスッキリしたぜ。」
「にしてもSランクNPC様は強すぎんだろ。五芒星剣はレベル50越えてんだろ?それが赤子扱いって一体どんだけ強いんだよ。」
「喧嘩を売った相手は『聖剣』だってよ。」
「うわ、『聖剣』て言えばこの国の騎士団の元トップだった奴だろ?」
「そんな奴に喧嘩売ったのか頭悪すぎんだろ。」
「おい、噂をすりゃ『聖剣』様のお出ましだ。」
――――
「お願いだからよぉジェイミーちゃん、今夜一杯飲みに行かねぇか?いい店見つけたからよぉ。」
「いえ、仕事がありますので…。」
「一杯だけでいいんだ、この通り!」
「すまんがそこを退いてくれるか。」
「あん?ああ、聖剣様か。俺はジェイミーちゃん口説いてんだ他へ行ってくれ。」
「クエスト達成報告に来たんだ、ジェイミー殿に用が無いのなら退いてくれ。」
「聞こえなかったのか?俺はジェイミーちゃんに用があんだよ。」
「そちらこそ聞こえなかったのか?退いてくれ。」
「あんだと!?」
「煩い喚くな。」
「あのー取り込み中ごめんなさい、ギルドの受付ってここで合ってますか?」
「ああ、すまない。受付はここだ。今この煩い奴を退かすから待っていてく……れ…………か、か、かか、かわい…………、こほん、すみません取り乱しました。突然で申し訳無いが、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「ふぇ、名前ですか?アイちゃんです!」
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