一章
第5話 30の質問とアバター
ゴーグル型のヘッドセットの電源を入れ装着したのは良いけど視界が真っ暗だ。
ななちゃんの言う通りにしたはずだけど…。
きょろきょろしていると自分が着ていた服とは違う装いになっている事に気が付いた。
少し古臭い布切れを繋ぎ合わせたみたいな服装だった。
もうゲームの世界の中なのかな?
ちゃんと立っている感覚はあるのだが、如何せん視界が真っ暗なため少し不安になっていると二十秒程経って視界の前に一つのメッセージが書かれたウィンドウが現れた。
【通信環境の確認を行います。暫くお待ちください。】
じっと待っているとウィンドウが消え、新たなウィンドウが現れた。
【これからいくつか確認をします。VRMMOは初めてプレイしますか?】
唐突に質問がきた。
テレビゲームや携帯ゲームはあるけどVRMMOはこれまでにやったことは無い。
あれ、YESボタン無いよ?
ウィンドウには質問だけ書かれており、答えるボタンが無かった。ぺたぺた触ろうにも空を切るばかりで変化が無い。
そうだ、声で答えればいいんだ。
「はい、初めてです!」
元気良く答えるとウィンドウが消え、また新たなウィンドウが現れた。
【動作の確認をします。アバターを動かしてみましょう。問題なく動くのを確認したらOKと言ってください。アバターの初期身長は160.00cmに設定されています。後ほどアバター設定にて変更可能です。※現実の身長に合わせることをオススメします。】
とりあえず歩いてみたり、走ってみたり、ジャンプしてみたり。
いつもより目線の位置が相当上になっていた。現実の身長が142cmのため、結構違和感がある。
ちょっとふらつく感じかな?
確かに違和感はあるけど…。
「将来160cm以上になる予定だからこれでも良いかもね。」
この空間にはこの発言に反応するものはいなかった。
「おっけーでーす!」
ウィンドウが消え、そしてまた次のウィンドウが現れた。
【メニュー画面を開いてみましょう。左手の人差し指と中指を上から下へ降ってみてください。】
☆☆☆
それからいくつかの確認や質問に答えていると、突然今までとは毛色が違う質問が現れた。
【好きな食べ物は何ですか?】
これは普通に答えても大丈夫なのかな?
「えっと、お母さんが作った料理は全部好きだし、あとななちゃんの作ったお好み焼きも好きだよ。」
【好きな休日の過ごし方は?】
「休日?んー、ななちゃんと遊ぶことかなー」
【遠くからお祭囃子が聞こえてきました。あなたはどうしますか?】
「お祭り?ななちゃんと一緒に行きたいなー」
【時間は厳守する方ですか?】
「時間は守るよ!……て、なんか学校でななちゃんとやった性格診断?みたいなのに似てるね。」
【人前に出るのは苦手ですか?】
「ちょっと苦手かも…」
【感情的か理論的か、あなたはどちらだと思いますか?】
「考えるのはななちゃんが得意で、私はどちらかと言うと感情的なのかな?」
なんか全然ゲームと関係ない質問ばっかり!
☆☆☆
30個くらい質問に答えたけれど最初の諸々の確認以外はゲームと関係ない質問ばっかりだった。
【最後です。あなたはこの『ユグユグ』の世界で何をしたいですか?】
どうやらこれが最後の質問のようだね。
一応、ななちゃんにどんなゲームかはある程度聞いていて、やりたい事も決まっている。
ななちゃんは言っていたのだ、このゲームの世界には見たことない可愛い動物が沢山いるって。
「沢山の可愛い動物達とお友達になりたいです!」
【これで確認事項は終了です。アバター作成に移ります。】
今まで真っ暗だった視界が開けると、白い部屋の中にいた。ずっと暗かったからか少し眩しい。
そして、部屋の中心にいる私の前にもう一人直立不動で立っている人がいた。
【目の前のアバターはあなた自身です。メニュー画面を開きカスタマイズしましょう。】
なるほど、自分で自分を見ながら容姿を変えられるんだね。
先程教えてもらったメニュー画面を開くと、まずアバターの名前を決めにきゃ行けないみたい。
名前かー、どうしよう。
いつものでいいかな。
「アイちゃんっと」
そのまんまだった。
それから、アバターの色んなところを弄れるらしく、いじいじすること一時間。
「よし!」
目の前には現実のあいと生き写しレベル程のアバターが完成していた。
一番悩んだのはやはり身長だった。
悩みに悩んで一旦現実と一緒の身長にした。
ゲームに慣れたら変更してみようと思うあいだった。
メニュー画面の完成ボタンをおすと新たなウィンドウが現れた。
【チュートリアルピクシーを設定しますか?】
チュートリアルピクシー?ピクシーという事は妖精さん?仲間にできるのかな?
分かんないからとりあえずYESにしておいた。
【これで以上となります。これからガラルシア大陸、ヴァルムス王国・始まりの都市「王都ヴァルムス」へ転送します。】
ようやく、ゲームの世界に行けるみたい!わくわく。
視界がまた暗転し、少し浮遊感を感じたと思ったら直ぐに視界が開けた。
辺りを見渡すと、ここはどこかの建物の中っぽい。
小学生の頃見た絵本の中の教会みたい。天井たかーい。
そんなことを思っていると横から声が聞こえてきた。
「え?………あ、あいちゃん?」
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