第2話 うりうり
目が覚めて、枕元にある薄ピンク色の目覚まし時計を仰ぎ見る。
セットしていた時間より一時間も早く起きちゃった。
「ん〜~っ……はぁ」
体を起こし大きく背伸びをする。
早く目が覚めたからって二度寝する気は無い。
カーテンをバサッと開け放ちながら、これからの中学校生活に胸を躍らせる。
正確には、昨日入学式が終わっているのだが徐々に実感が湧いてきて、ずっとドキドキしている。
寝付きだって悪かったのに、目はすっかり覚めていた。
新しい通学路、新しい友達、そして……。
朝の日差しを浴び、これから始まる未来に思いを馳せていると廊下からいい匂いが漂ってきた。お母さんが朝食を作っているのだろう。
この香ばしい匂い…むむっ、お魚かな?
部屋を出て、小走りで階段を下ってリビングへ行く。
「
リビングへ入るやいなや、大きな声で挨拶をする。
「あら、あい。おはよう、がばい早かね。そがんはよー起きてもまだ朝ごはん出来とらんよ?」
リビング直結のキッチンからお母さんが顔を出し、少しびっくりしたような表情で言う。
「分かってるよ!だって目が覚めちゃったんだもん。ぴーちゃんもおはよ」
リビングにある隅にある小動物用の小屋。ドーム型もふもふベッドの中にいるうさぎのぴーちゃんが少し顔を出す。
「ぴーちゃん今日も可愛いねぇ」
よーしよしよしよし。
「あいちゃーん、顔洗って歯磨きしてきんしゃーい」
「はーい」
もっと撫でたいけど、母ちゃんの言う事は聞かないと怒った時めっちゃ怖いからね。
ちなみに朝ごはんは焼鮭でした。私のお鼻さんは天才のようです。
☆☆☆
朝食を食べ終わり、自室で支度をしていると買ってもらってまだ一週間も経ってないスマホからLimeの通知音が聞こえてきた。
Limeは無料のコミュニケーションアプリらしいんだけど、ななちゃんがこのアプリを入れて欲しいって言うからダウンロードしたんだ。
もちろん、ななちゃんと家族とブリキュア(女児向け番組)公式アカウントしか友達登録されていない。
こんな時間にブリキュアからメッセージなんて届くはずも無く、通知の相手はななちゃんだ。どうやらななちゃんも早起きしたらしい。
全身タイツで仮面を被ったキャラクターのおはようスタンプが送られてきている。
よく分かんないキャラだしブリキュアのスタンプ送っておこう!
☆☆☆
少し早いけど二人で学校へ向かうことにした。
「ねぇねぇ、ななちゃん」
「なーに?」
「ななちゃんが早起きなんて珍しいね、さては学校楽しみすぎて寝れなかったのかな〜うりうり」
「そ、そんなことないけど。…まあ少しは楽しみかな?…というか、あいちゃんこそ寝れなかったんじゃないの?寝ない子は成長しないぞー」
大きな川の縁をなぞるような通学路をぴったりくっつくように並んで歩く。
というか、私が一方的にななちゃんの肩にほっぺたを擦り付けるようにじゃれ合っていた。
二人でいる時の恒例になっている。
小学校低学年の時は身長がほぼ同じだったから肩どうしでうりうりしてたんだけど、4年生になったくらいから、成長盛りの男子も裸足で逃げ出す程の速度でななちゃん身長が伸びていったのだ。
今の身長差は14cmにも開いていて、少し見上げないと目を見てお話も出来ない差だ。
でも大丈夫!お母さんに身長を伸ばす方法を教えて貰ったらからね!すぐに追いつくよ!
「ふふふ…私の成長はこれから始まるんだよ…!明日にはもう追いついてるかもね」
「いやー流石のあいちゃんでも、一日で追いつくのは無理じゃないかな」
「ふぇ?…無理かなぁ?じゃあ明後日!」
「一日二日で追いつける差じゃないと思うけど」
「お母さんに教えてもらったんだもん!牛乳飲めば大きくなるって!」
「あー牛乳かー、でもあいちゃん牛乳苦手でしょ?飲める?」
「の、飲めるよ!もう小学生じゃないんだよ!昨日も、コップ一杯分の牛乳だって一時間で全部飲めたもん」
「コップ一杯分は10秒だよあいちゃん……」
「うっ…で、でも頑張ったんだよ!」
「よく頑張った!偉い!よしよし〜」
「ふぇ…?え、えへ、えへへへへ…」
ななちゃんよしよしされちゃった。
天にも登れるほど心地良い動きと力加減。
小さい頃から頑張った時や、悲しい時、怒った時、ことある事によしよししてくれる。
今じゃプロの手つきだ。お母さんと同じくらいかな?
総理大臣になったら、ななちゃんをあいちゃんよしよし大臣に任命しよう。
……ん?……ちょっとまってね。ななちゃんの身長が急激に伸びた理由って……、給食の牛乳をななちゃんへ横流ししたせいなのかな?小学6年間もの間、敵?に牛乳という名の塩を送り続けた結果が今の身長差を作ってしまった原因てこと?
中学校も継続で給食だし、もちろん牛乳さんともまた毎日こんにちはしないといけない。
私が頑張って牛乳パック一つ飲んでも、ななちゃんも同量飲んでいることになる。当たり前である。
「……な、ななちゃん」
「どうしたの?改まって」
「あのね……三年くらい牛乳を一滴たりとも飲まないで……お願い!」
「なんで!?三年て中学の間ずっとじゃん、なんでそうなったの?」
「だってだって!頑張って牛乳飲んでもななちゃんも飲んじゃったら追いつけないじゃん!」
そんなこんなで、もうすぐ学校に到着。ななちゃんとおしゃべりしながらの登校はあっという間に終わったのだった。
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