殺伐としたVRMMOで飼育係始めました!

屁理屈

プロローグ

第1話 可愛いの権化

 ニャー


「にゃー」


 昨日入学式があり、ウチは中学一年生になった。今日は学校説明がほとんどで本格的に授業が始まるのは明日から。今朝のホームルームで自己紹介をしたんだけど、ウチのクラスのメンツは小学校からの友達が多くてあんまり緊張しなかった。


 ニャーニャウ?


「にゃぁ!」


 でも、入学式の日。真新しい少し大きめの制服を着て、初めて校門をくぐった時から、なんだか胸がドキドキして、1日経ってもまだ止まらない。

 新しく何かを始めるときはいつもそうだ。夜もあんまり寝れなかったし。


 ニャウニャウニァゥニャア


「にゃうにゃあにゃあ?」


 あいちゃんもドキドキワクワクして寝れなかったって言ってたし、きっとこれから楽しい事が沢山待ってる!そんな気がする!


 ニャーウ


「にゃうにゃ!にゃいにゃーい!」


 最後のは多分絶対バイバイて言ってるよね?


 猫ちゃんとのお話が終わったみたい。

 いつもとは違う帰り道の景色に、あいちゃんと二人でキョロキョロしながら歩いていたら茶トラ柄の野良猫を見つけた。しゃがんで目を合わせお話していたあいちゃんが、軽快に去っていく猫の後ろ姿にブンブン手を振っている。


「あいちゃん、猫ちゃん何て言ってたの?」


 膝に手を置き立ち上がっているあいちゃんに声をかける。


「んとね、小学校のプール脇の陰のとこに今住んでるんだって!」


 確かに、プールが一段高く作られてて地面との間に隙間がある。あそこなら雨も凌げるかも。


「あと、赤ちゃんも産まれたって!今度遊びに行ってもいい?て聞いたら赤ちゃんがもうちょっと成長したらね、だって。猫の赤ちゃん見たかったなー、可愛いだろうなー」

「多分絶対可愛い。ただ怖がらせちゃうかもだし、ここは猫ちゃんの言うとうりにしておこうよ」

「はーい、こうなったら早く帰ってぴーちゃんを思う存分撫で回してやるんだー」


 猫ちゃんも可愛いかったけど、ほっぺたを膨らましぶうたれてるあいちゃんまじで可愛すぎる。ウチも撫で回して欲しい。


「ねね、今度のお休みあいちゃん家に行ってもいい?ウチもぴーちゃんヨシヨシしたいな」


 ぴーちゃんとは、あいちゃん家で飼っているまん丸な兎さんだ。


「もちろん!ななちゃんが来てくれたらぴーちゃんも喜ぶよ」


 ウチ、ななちゃんこと山渕菜々子やまぶちななこと、あいちゃんこと矢野愛やのあいは、幼稚園からずっと一緒で幼馴染であり親友なんだ。家も隣同士。

 あいちゃんは女のウチから見てもホントに可愛い。くりくりの目に、眉と肩くらいで切りそろえられたつやつやの髪、お餅みたいに柔らかそうなほっぺた、いつも一緒に遊んでるのに全然日焼けしてない綺麗な肌、ちょっと大きめの制服の所為かどこかお人形さんのよう。計らず萌え袖になっちゃってるのもポイント高い。


「あいちゃんの制服姿にめっちゃ似合ってるよね、可愛い」


 あ、声に出しちゃった。


「ふぇっ!?…そ、そうかな?…て、これもう十回くらい言われてるよ?ななちゃんに」


 照れているのか、あいちゃんの顔がりんごみたいに真っ赤になってる。

 可愛いのだから仕方ない。何回も言いたくなるほど可愛いくて愛くるしいのだ。


「で、でも…他の人がいる所だから言えなかったけど、ななちゃんもすっごく可愛いよ?制服…とても似合ってるよ?」

「うっ…!」


 なんという破壊力。上目遣いって凄いね。


「あ、ありがと…照れるね」


 ウチの顔もめちゃくちゃ紅くなってると思う。自分でもわかるくらい顔が熱い。


「ななちゃんはね、小さい頃からずっと私と一緒に居て遊んでくれるし、困ってる時は助けてくれるし、いつも元気で凄いなぁて思ってるよ。あとあと、口癖が多分絶対て、どっちなのかよくわかんない所が面白い!」

「う、うん」


 最後のは褒めてるの?


「クラスも一緒になれたし、これからたっくさん楽しい思い出作ろうね!ななちゃん大好き!」


 そう言ってあいちゃんはウチに横から抱きついてきた。


 あああぁぁぁぁっ!!!かわいいぃぃぃっ!!ウチもだいすきいいぃぃぁぁ!


 心の中で叫び声をあげ、ウチもあいちゃんを抱きしめる。

 あいちゃん成分を過剰摂取しすぎて、ヤバいこれ、飛ぶぞ。


「そ、そういえば部活は何にするか決めた?」


 このままだとおかしくなっちゃいそうだったので、話題を変えてみる。


「うーん、まだかなー…」


 抱きついたままウチを見ていた視線が足元に落ちる。


 やっぱり少し元気無い…?


 長年一緒にいるからこそなのか、あいちゃんが少し落ち込んでいるのを感じることが出来た。そして、その理由をウチは知っている。

 理由を知っているからこそウチじゃ解決できる事じゃないのを分かっている。

 ウチに抱きついたままのあいちゃんの頭を撫でる。目を細めて気持ち良さそうにされるがままになっている、可愛い。


「じゃあ今度さ、一緒にどの部活入るか考えようよ。ウチさあいちゃんと一緒の部活に入りたいなー」

「ふぇ?私と一緒の部活でいいの?」

「当たり前じゃん!幼稚園からずっと一緒だったのに、部活違うとかなんかやだもん」

「ななちゃん…!ありがとう!私もななちゃんと一緒がいい!」


 あいちゃんの隣はウチのもんだ!誰にも譲らねぇ(イケボ)

 そんな決意をひとりでに固めた。



 あ、そういえば最近ハマってるゲーム、あいちゃんにも勧めてみよっかな。

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