第187話 闇の集結

 とある場所。集うのは闇の人間たち・・・。


 「皆さんが集まるのは初めての事では? まあ、会議自体初参加ですが」


 ウナが華麗な手つきで皆を指さす。


 「会議に参加すること。私も初だ」


 ドスが腕を組んで言った。


 「それはお前らが新参者だからな。しょうがない。昔は集まっている」


 トレスが指摘した。


 「俺は、次……誰を殺せばいいんだ。ここで決まるんだよな」


 クアトロは標的が欲しいらしい。


 「・・・俺は・・・・抜け出すのが面倒でね・・・勘弁してほしい・・・会議なんて」

 

 シンコは机に顔をつけて眠ろうとした。


 「今はですね……」


 セイスの話は、なぜか途中で終わった。


 「これが全部なのか。私は全員を知らんのだが」

 

 ドスが言うと。


 「まだいる。来てないみたいだ。セロがな」


 トレスが返した。


 「私は最初からいるぞ。見えてないのか」

 「「「!?!?!?」」」


 上座の席に座るセロ。

 気配がなく、誰も気づいていなかった。

 彼から会議が始まる。

 

 「会議を始めたいが、シエテはどうした。いないか」

 「います」

 「おお。私の後ろにいたか」

 「ええ。そうです」

 「久しぶりだな。お前が姿を現すのもいつ以来だ……まあ、席に着け」

 「ええ。そうします」

 

 コクンと頷いたのはシエテ。

 闇の後ろから更なる闇として現れた。


 「では、揃ったようだ。我ら夜を彷徨う蛇ナボルの幹部が一同に集まるのは・・・そうだな。いつぶりだ・・・」

 「おそらく・・・・・あの頃・・・・奴らを殺した前」


 セロの言葉にセイスがたどたどしく反応した。

  

 「戦の女神リティスと紫電。それと白閃か」

 「奴らはとびきり強かったからな。殺すしかなかった」

 

 セロの呟きにクアトロが答えを被せた。


 「ああ。太陽よりも厄介だったからな。大陸を制覇するにはな」

 「そういうこと・・・・眠い」


 今度は半分寝ながらのシンコが答えた。


 「太陽とは何なのだ。詳しくは聞いたが、それほど重要なものなのか」


 ドスが聞いた。


 「ええ。私も気になります。最近ドスから私も聞きましたが、詳しく知りませんよ」

 

 ウナも同様の意見だ。

 セロが答える。


 「重要だ。暁を待つ三頭竜ドラウドの太陽。奴が生きていると、太陽として担ぎ上げられて、集結される恐れがある・・・なのに、奴を殺せなかった。そうだろ。トレス」

 「ああ。俺が考えたのは三回。それらすべてが駄目だった。奴は運が良すぎる」

 「奴とは・・・あの男か。あのシンドラの事件の時に邪魔をしてきた男」

 「ん。シンコも殺そうとしていたのか」

 「・・・策で、シンドラを巻き込んでダーレーを潰そうとしていたらな・・・・なんか邪魔が入った・・・あの時な」

 「ああ。それは私も表で聞いたな」


 ドスも例の事件を知っていた。

 シーラ村武装蜂起未遂事件のことである。 


 「私もです。奴を殺そうと数回秘密部隊を送りました。ですが、全て失敗。奴に届く前に全て闇に消されています。奴の近くには得体のしれない人間がいます。もしかしたら太陽の戦士では? 未確認の?」


 シエテも、太陽の暗殺を試みていた。

 しかしすべて失敗に終わったらしい。

 原因は不明である。


 「なに。それは知らない話だな・・・クアトロの暗殺部隊。ウナの戦闘部隊。それらよりもさらに秘密裏に処理できるはずの部隊でも殺せんとなると・・・・まずいな。太陽の戦士かもしれない」


 セロでも知らない事があるようだ。

 彼がこの組織のリーダー的存在である。


 「ええ。そうですよセロ。闇同士の戦いに長けている私たちでも、なぜか殺せませんでした。子供の頃。それとこちらに来てからも殺そうとしたのですよ。奴の仲間は強く、だから一人になるタイミングで何回か仕掛けたのですがね。その寸前で必ずこちらが返り討ちにあっています」

 「それは……お前の部隊の影を上回る影となると・・・それはもう・・・確定ではないか」


 眠そうなシンコでも驚いて話していた。


 「ええ。そうです。太陽の戦士。それが奴の影にいると思います」

 「そうとしか考えられない……か。でも奴の母、最後の太陽は死んだのだ。太陽の戦士らは、太陽の人を知らなければ強さが出ない。それだと奴こそが太陽であると知っている人間なんて……もういないはずだ」


 セロもこの場の古参の人間も、皆がこの意見だった。

 奴が太陽だと知るはずがない。

 辺境にいた最後の太陽が消えたことも、その子供がいたことも。

 散り散りとなった戦士たちが知っているわけがないのだ。


 「まだいたんじゃないのか・・・・太陽だと知っている人間がさ」


 シンコが冷静に答えた。


 「でもですよ。最後の太陽を殺せなかったのは、サナリアの王のせいです。私たちが毎度刺客を送っても、あの男によって消されていたのです。でもあの男は、太陽の戦士ではありません」


 シエテが事実を述べると。


 「だから・・・・その現場に、太陽の戦士がいたんじゃないのか・・・・闇と戦えるのか。普通の戦士がな!・・・それに戦の女神リティスと紫電と白閃だけだぞ。闇に精通せんでも戦えるのはな」


 シンコが反論した。

 

 「なるほど。たしかに」


 素直にシエテが頷く。


 「いたみたいだね・・・・」


 珍しくシエテが答えているが、また言葉が途中で切れていた。


 「そうか……ならば警戒を強くせねばいかん。太陽の戦士だけはいかん」


 セロがそう言うと。


 「なぜだ。それ程警戒しないといけないのか。その連中を」

 

 ドスが聞いた。


 「ああ。警戒はしないといけない。それがたとえ極少数だとしてもだ。奴らは強いのだ。我らは幾度か奴らと戦っている。それで何度も敗北しているのだ。その中で唯一勝ったと言える戦いがあの孤島の戦いだ。我らはあそこで何とか勝った。だが完璧に勝ったとも言えない。敵は四百を失い、我らは七千以上も兵を失ったのだ。あの戦いのせいで、我々の組織の力は一時弱くなってしまい、大きく動くことは出来なくなった。今も闇に潜み続けているのは、その時のせいだ」

 「四百と七千だと! 数が違い過ぎる」

 「そうだ。それ程奴らは強い。太陽の戦士は化け物ぞろいなのだ・・・いや、化け物になっていくのだ。太陽の人がいる限り、太陽の戦士は強くなる。それに太陽の人の魅力が強ければ強い程、戦士が輝くのだ」


 セロの言葉に驚くドスは、指で机を軽く叩いた。


 「そうです。ですから、ラーゼも抑えているのですよ。あそこも太陽の戦士になれる器があります。だから抑える役割はあなたですよ。ウナ。出来てますか」


 シエテがウナに聞いた。


 「出来ていますよ。バルナガンからの監視はしっかり行われています」

 「さすがだな。名家のお嬢さんは」

 「セロ、失礼です。私は、名家などではありません。あんな男どもと一緒にされるのは嫌ですよ。馬鹿ですよ。特に弟は!」

 「ハハハハ。嫌なのか。あれらと一緒は」


 質問したセロではなく、ドスが笑って言うと。


 「ドス。そちらこそ。嫌なのでは。あれらと一緒なのは」

 

 ウナが怒った口調で返した。


 「まあ、私は、別にどうでもいいな。あれらを家族だと思っていない」

 「それは私も一緒です」


 二人の意見は一致していた。


 「まあいい。肝心なのは、ラーゼを押さえる事と。太陽を消すことだ。これさえ出来れば、大陸を一つに出来るはずだ。そうだろ。シンコ」


 セロが聞くと。


 「う・・・・そうだな・・・眠い」

 「眠るな。お前が調略部隊の長だろ」

 「・・・そうだな・・・そんな感じの仕事だな。まあ、王国の方もコントロールしているからな。大陸統一は、なんとか出来るだろう」

 「そうか。仕事はしているのだな、お前」

 「・・・あたりまえだ・・・・眠いながらもやっている・・・俺はここに来るのに苦労するからな・・・・眠いんだよ」

 「悪かった。お前はあちらにいるからな。抜け出すのも難しいからな」

 「ああ。そうだ」

 「シンコの策があれば、我らの宿願『大陸制覇』がなされる。ここからはそのために皆で戦うしかないな。ドス、ウナがいれば帝国はたやすい。シンコがいれば王国もだな。あとは二つの国をコントロールしながら、一つにすればよいのだ」


 セロの言葉に全員が頷いた。


 「だが、それには奴だけは消さねばならない。太陽だけは。消しておかないと。この大陸に日が昇っては困る」

 「殺すタイミングはいつでもあるだろう。戦争時でも、常時でもだ。俺にまかせろよ」


 クアトロが得意のダガーを持ち出した。


 「それが出来たら最初から苦労しませんよね。私の部隊でも出来ないと言うのに」

 「は? それはお前の部隊が雑魚だっただけだ。シエテ」

 「いいえ。あなたの部隊よりも確実に私の部隊の方が強い。あなたでは倒せませんよ。それにあなたはこの間、何者かに出し抜かれたのでしょう。その程度の影レベルで、太陽の戦士に挑むのはちゃんちゃらおかしいです……変装も出来ない暗殺者など・・・雑魚です」

 「うるさいわ。俺なら倒せるに決まっている。お前だから倒せないんだ。正面から殺せばいい」

 「だから、奴の周りの人間は強いのです。上手く殺さないといけません。それに裏に誰かいるのですから」

 

 二人の喧嘩の間に入るのはセロだ。


 「いい。喧嘩をするな。それに今の時期で暗殺は難しいだろう。太陽の戦士もいるかもしれんのだ。そうなると、奴の立場であれば、戦争。または内乱で引っ張り出して、殺すしかない。以前のサナリアでの戦いみたいに、戦争のどさくさに紛れて殺すのが一番いい手であろう。シンコ、それらはどうなっている。王国が重要だろう」

 「今は無理・・・内政時期だ。ネアルが兵の補充を考えている。それも以前よりも強い兵でだ。数年を要するつもりだな」

 「そうか。どれくらいだ」

 「奴は五年と言ってきた・・・でも俺は三年でやれると言ったわ」

 「そうか。なら、帝国の内乱はどうだ。できそうか」

 「そっちもだがな。今すぐは無理だ・・・でもシンドラ。またはラーゼを使えば、ある程度時間を短縮できるだろう・・・二つを動かして、徐々に狙う。それに俺たちが協力し合えば、十年単位の時間は必要ないはずだ。もっと短くて済む」

 「そうか。わかった。そうなると我らが連携してやるしかないと言う事だな。では指揮と作戦を頼むぞ。シンコ」

 「・・・俺の仕事・・・多くねえか・・・忙しいのに表で・・・」

 「ふっ。すまん。頼んだ」

 「・・・ああ・・・わかった。やっておく」


 シンコが承諾したことで、セロは安心した。

 彼の性格はともかく、働きぶりだけは信頼をしているようだ。


 「では、我らは虎視眈々と太陽を消す機会を窺いつつ、大陸を統一する動きを目指すか。ウナ。ドス。トレス。クアトロ。シンコ。セイス。シエテ。我らはこの大陸を取りに行く。夜を彷徨っていた我らが、朝を目指すとするか!」


 ここにいる七つの蛇らは、黙って頷きセロの言葉を丸飲みにした。

 



―――あとがき―――


ナボルの会議。

セロ。ウナ。ドス。トレス。クアトロ。シンコ。セイス。シエテ。

この八人が幹部であります。


会話が多く。

一気に出てきたので、特徴を掴むのが難しいと思いますが、よろしくお願いします。

彼らの実力は相当なもの。

それは戦う才だけではありません。

色々な罠を、仕掛けている連中であります。


物語はここから大きく動いていきます。

戦いの舞台は大きな舞台へ・・・。



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