第4話

翌日、慎太郎とデートの日。

9時ちょうどに慎太郎が家に迎えに来てくれた。

「おはよう、慎太郎。迎えに来てくれてありがとう」

「俺が迎えに来るって言ったんだから当たり前だろ」

「そうだけど、嬉しいよ。ありがとう」

「渚はすごいよな。ちゃんと人にありがとうって言えて」

「そう?嫌な人には言わないよ。慎太郎は誰にでも優しくてすこいよ」

「俺は高田さんには冷たいぞ」

「あっ、そうだった。でも、高田さんに何かあれば心配してくれるでしょ」

「心配するよ。でも、それは渚が悲しむからだよ」

そう言って、慎太郎は私の手をギュッと握った。

「慎太郎…?」

「俺はさ、渚が悲しんだり傷ついたりするのは嫌なんだ。だから、幸せになれよ。……って、俺クサイよな」

「うん、本当そうだよ。でも、ありがとう。嬉しい」

私も慎太郎の手を握り返した。

「それより、どこに行く?」

「ショッピングセンターに行こうよ。お互いのクリスマスプレゼント選ぼう!クリスマスは昨日だったけど」 

「それ良いな。じゃあ、行くか。それより…手…どうする…?」

「このままでいいんじゃない?デートなんだし」

そう言ったら、慎太郎はすごく嬉しそうな顔をした。

その笑顔を見て、私も嬉しくなった。


ショッピングセンターに着き、お互いのプレゼントを探しに行くことに。

誰かにプレゼントを贈るなんていつ以来だろう。

慎太郎が喜ぶ顔を想像するだけで、ワクワクする。

慎太郎は常に薄着だから、マフラーか手袋にしようかな。

メンズのショップに入り、小物を探す。

でも、慎太郎の好きな色とかデザインが分からない…。

何がいいんだろう…。

そんなとき、パッと目に入ったのが、黒と白のマフラー。

地味だけど、華やかな顔の慎太郎には、このくらいのものが似合うはず!

レジに向かうとき、高田さんの姿を見つけ、声をかけようとした。

そしたら、私より先に「高田くん」と声をかけた女の人がいた。

佐山和美さん。

高田さんの先輩刑事で、高田さんの想い人。

二人とも私服姿で、すごく楽しそう。

高田さん、佐山さんの前であんな風に笑うんだ…。

昨日はあんな風に笑わなかったのに…。

私は動揺して、動けなくなった。

「おい、何してるんだよ」

「あっ…慎太郎…。これ、買おうと思って…。すぐ買ってくるから、フードコートで待ってて」

「店の外で待ってる」

「すぐ行くから、フードコートで待ってて。お願い」

「…分かった。ゆっくり来いよ」

「うん、ありがとう」

高田さんと佐山さんに気づかれないように、会計を済ませて店内を出た。

早く慎太郎のところに行かなきゃ…。

でも、こんな気持ちじゃ慎太郎に会えないよ…。

きっと、慎太郎は私のことが好き。

でも、私は高田さんが好きだから、慎太郎の気持ちには応えられない。

私の初恋は慎太郎だった。

初恋のときのまま、今でも慎太郎が好きだったなら、どんなに楽だったかな…。

ボーっとしながら歩いていたら、腕を掴まれた。

「どこ行くんだよ。フードコートそっちじゃねーぞ」

「慎太郎…慎太郎のバカ」

そう言って、抱きついた。

「バカって何だよ。ていうか、泣いてるのか?」

「泣いてない。でも、ギュッてしてほしい」

恋人でもない男の子に、こんなことを頼む私は何てズルイ人間なんだろう。

でも、今は慎太郎にギュッとしていてほしい。

「しかたねーな。今だけだぞ」

そう言って、慎太郎は私をギュッと抱きしめてくれた。

慎太郎の身体は、とても温かかった。

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