第2話
高田さんの食事が終わって、ファミレスを出た。
「渚ちゃん、どこ行きたい?」
「水族館に行きたいです!」
「水族館かぁ、いいね。僕、久しぶりだよ」
「じゃあ、行きましょう!!」
高田さんの手を握ろうかと思ったけど、私にそんな勇気はない。
電車に乗って、水族館に着いた。
料金を払おうとしたら、高田さんが「僕が払うよ」と言ってくれた。
「無理やり誘っちゃったのに、いいんですか?」
「子どもは大人に甘えなさい」
子ども扱いされて悔しい…。
でも、大事にされてるみたいで嬉しい…。
「高田さんは優しいですね」
「優しいなんて取り柄にもならないでしょ」
「そんなことありません!高田さんは他にも沢山いいところあります!!」
「あはは、渚ちゃんは優しいね。そんなこと言ってくれるのは渚ちゃんだけだよ」
「そんなことないと思いますよ」
「ありがとう、渚ちゃん」
高田さんは私の頭を撫でた。
突然の行動にドキドキした。
「ねぇ、慎太郎。あれ、渚ちゃんじゃない?」
聞き慣れた声が、私の名前を呼ぶ。
嫌な予感…。
「高田さん、チケット買ったことだし、入りましょう!」
高田さんの手を握って、水族館の中に入る。
「渚ちゃん、さっき名前呼ばれてなかった?」
「えっ、そうでしたか?」
笑って誤魔化そうとしたけど、また「渚ちゃーん!!」と、私を呼ぶ声がした。
「やっぱり呼ばれてない?」
「はい…呼ばれてます…」
声のほうを振り向くと、やはり健二くんがいた。
及川健二くん、私の友達。
さっき、慎太郎という名前も出ていたから、私の幼なじみの望月慎太郎も一緒にいるのだろう。
正直、高田さんと慎太郎を会わせたくない。
何故か慎太郎は高田さんをライバル視している。
「健二くん、声が大きい!!」
「ごめん、ごめん。だって、渚ちゃんが無視するんだもん」
「無視したわけじゃないよ。ただ放ってほしかっただけ。私、デート中だから」
そう言って、高田さんと腕を組んだ。
そしたら、慎太郎に引き離された。
「慎太郎、何するのよ!」
「簡単に男にくっつくな!」
「慎太郎の馬鹿!」
「ほらほら、喧嘩しない。それより、君たちも一緒に回らない?」
「私は高田さんと二人がいい!」
「二人にはさせない!」
「まあまあ二人とも。高田さんも言ってるけど、四人で回ろうよ」
高田さんと健二くんに促され、四人で回ることになった。
「あー、楽しかった!!」
「高田さんと二人きりだったら、もっと楽しかったのに」
「渚ちゃん、そういうこと言わないの」
「はーい、ごめんなさーい」
「俺はお前がいなければ良かった」
「君は失礼な子だね」
「そうだよ、失礼だよ。謝って!」
「…ごめんなさい」
慎太郎、素直なところもあるんだけどなぁ…。
「また四人で集まりましょうよ」
「いいね。高校生に囲まれて、楽しかったよ」
「俺は嫌だね」
「私も楽しかったので、また遊びましょう!慎太郎は嫌なら来なくていいよ」
「…やっぱり俺も行きたい」
「素直でよろしい」
慎太郎の背中をバンバンと叩いた。
「渚、やめろよ」
慎太郎は恥ずかしそうに、私から顔を背けた。
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