(4)――私だけが「今日」に閉じ込められてしまったのだ。
目が覚めて、身支度を整えて、リビングに行く。
母を見送りつつ朝食を食べ、戸締まりをして、家を出る。
だけど行き先は学校ではない。あそこに居ても、気が狂いそうになるだけだ。
なにか昨日の「今日」とは違うものに触れたくて、私は町に出た。
駅前の広場では、大勢の人間がなにごともないように過ごしていて、やはりこの繰り返しは私にしか起きていないのだと、再認識させられる。私だけが「今日」に閉じ込められてしまったのだ。
視界がぐにゃりと歪んで、瞳に涙が溜まっていることに気がついた。
流石の私も、対処しきれない事態に遭遇すると涙が出るらしい。
ここで泣いたら、きっと通りすがりの優しい人が慰めてくれるだろう。だけどそれは、明日の「今日」でも同じことだ。それを思うとあまりにも虚しくなって、私は駅のトイレに駆け込み、一人で泣いた。
夕方、家に帰ると両親から学校をサボったことについて怒られたが、そんなことはもう私の心には響かなくなっていた。
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