第八話
樋口くんがお店に来てくれたから数日経ったある日。
『この間、友達がソロキャン行ってきたんだって』
と写真付きで報告してくれた。
『楽しそうでよかった!
樋口くんはキャンプするの?』
と素朴な疑問だった。
キャンプをやっててほしいとも思ってなかった。
『やってないよ!
友達見てると楽しそうだから始めてみようかな?って思うけど、いろいろ大変そうだから』
樋口くんは丁寧に理由を教えてくれた。
こういう優しさはずっと変わらないんだなと嬉しくなった。
『もし、キャンプ始めたらその時は今度こそアドバイスよろしくね』
と樋口くんからのありがたい圧を感じつつ。
『オッケー!
期待に応えられるように今からもう勉強します』
こんなふうに樋口くんとまた話せるなんて思っていなかった。
樋口くんとの『縁』なんてとっくにどこかへ行ってしまっていて、もう話すことさえも会うことさえないと思っていた。
しかし、またこうやって連絡をとっている。
不思議な感覚であったが私は幸せであった。
本当に樋口くんがキャンプ始めたらアドバイスできるように仕事頑張らなきゃ!
と一念発起して、今日もバイトへ向かう。
バイト先は今日は平日とあって人はまばらであった。
先輩に仕事について相談してみた。
「先輩、聞いてもらっていいですか?」
「今日暇だからいいよ!
忙しくなったら話していられないけど、どうした?」
「私、なかなかキャンプについて詳しくなれなくて、この職業向いてないのかな?って思ったりしてるんですよね」
「うーん、キャンプ行ったことある?」
「ベランダでキャンプ飯食べたりはしたことあるんですけど、本格的なキャンプはないです」
「今度さ、グランピングでもいいから一回、キャンプ行ってみな?
仕事が向いてるとか向いてないとかじゃなくて、キャンプの魅力を知らないだけだよ」
「ああ!なるほど」
「家族でグランピングとかしてみて、楽しかったら仕事に活きると思うし、つまらなかったらキャンプが合わない人の気持ちに寄り添えばいい。
とりあえず行動してみないと何もわからないと思うよ」
先輩の助言はさすがであった。
「誰かを誘ってキャンプらしいことをしてみたらいいと思うよ!
この間お店に来た彼は彼氏じゃないの?」
「友達です」
「楽しそうにしてたから一緒にキャンプ行ったらどうかな?って思ったけど!
グルキャンでもいいし、とりあえずキャンプをしてみるべし
はい、忙しくなりそうだからここまで!」
「わかりました、ありがとうございます」
と本当に忙しくなったバイトを終えてぐったりしていた。
キャンプか…
働いていてわかるけどそこそこお金かかるんだよな…
揃えるとなるとハマる前提じゃないとなかなかハードル高いな!
誰かに声かけてみようかな?
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