第六話

重い扉が開き、そこに現れたのは紛れもない『樋口くん』であった。


永田くんが

「おー、樋口遅いじゃんかよー」


と言うと


みんなが口々に


「あ、樋口くん?

久しぶり!」


と大歓迎を受ける樋口くん。



「仕事なかなか終わらなくて遅くなって悪かったな」


と永田くんに返す。



外仕事なのか、日に焼けている肌はさら私にとって魅力的に見えた。




『私も樋口くんに声をかけた方がいいのかな?』



と悩みに悩んでいた。



そうして迷っていると…




「久しぶり!」



とそれは心地が良い声が聞こえてきた。


私はこの声を何年も待っていた。



ひさしぶりの5文字に高揚するわたし。




「久しぶり!元気だった?」


と会話を広げようと頑張る。





「うーん、元気だったよ!

倉敷は元気だった?」



そうだ!思い出した!

樋口くんは物腰が柔らかくて言葉選びが優しくて穏やかだったと。




返ってくる言葉、一つ一つが柔らかくて私にとってはとても心地よい空間であった。




「私は元気だったよ!

仕事で全国飛び回ってるって聞いたけど

仕事忙しそうだね?」



「忙しい!と言ったら忙しいし、これが普通と言ったら普通かな?

というかなんで俺の情報知ってるの?笑」




高校を卒業してから3年の月日を感じさせない会話が楽しかった



みんな高校生に戻ったように会話を楽しんでいた。


私もいろいろな人と話せた。




永田くんが

「そうだ!高校の時仲良かった奴らだけで連絡先交換しない?」



『え?永田くん、ナイスアシスト!』


と私は心の中で思う。




数名で連絡先を交換した。




それで同窓会は終了の時間を迎えることとなった。





二次会に行く人は行ったけれど、私は次の日の仕事のことを考えて参加しなかった




樋口くんが二次会に参加したかしてないかは知らない。



今日少し話せただけでも私は十分幸せだった。


『楽しかったなー』



と思って電車に乗っていると



ブー



と通知音が鳴る。




『なんだろう?』



と私は不思議に思った。



そこには見慣れない名前の人から連絡がきていた。




通知画面を見ると




そこには

『樋口玲央』と明記されていた。




『え?どうしよう?見る?見ない?』



見ないという選択肢はなかった。

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