第四話

「今は…」



に心が高鳴った。



「今は、電気工事士として全国を飛び回ってるらしいよ」



電気工事士?

と紗羅は思った。




「電気工事士ってどんな仕事なの?」


と疑問を投げかける女子もいた。



「電気工事士とは家庭用、屋外用の配線をする人のことみたい」



簡単に調べられる時代である。



「資格がないと働けないみたいよ?」



と次から次へと電気工事士のことで話が持ちきりになる。



紗羅は田舎の高校に通っていたので、普通科でも電気関係の資格が取れたり、土木関係の資格が取れたりする学校へ通っていた。



『そっか…樋口くん、電気工事士か』




と思っていたところへ、ある女子が



「職人さんってことでしょう?

資格取ってさ、資格なきゃ働けなくて

なんか気難しくて厳しい世界にいそう」




偏見なのか実際そうなのか女子たちは想像の域を出なかった。




実際、電気工事士は職人で経験がものを言う厳しい世界ではあった。



第一種と第二種の免許に分かれていて、第二種を取った人だけが第一種に挑めるのである。



『気難しい』イメージはどうしても拭えない。


厳しい世界に身を置いているためにどうしても気難しくなるのかもしれない。



でも女子たちは電気工事士についてひとしきり盛り上がり、ついでに樋口くんの容姿の予想を立て始めた。



「高校の時、色白ではなかったから外で仕事してて色黒?」



とか。



「いやいや、そこそこな顔だったからまあそこそこ?」



と女子はなんでも辛辣である。



「紗羅はなんで連絡とってないの?

あんなに仲良かったじゃん!」



と誰かが言った。



「うーん、なんとなく?

どっちからともなく連絡先聞かなかったし

卒業したらそれでサヨナラだった」



と紗羅の本心であった。



今回同窓会に参加することを決めたのも樋口くんに会いたいと少しも思わなかったと言ったら嘘になる。



なんであんなに仲がよかったと自分でも思うのに連絡先を交換しなかったのか?



『勇気がなかった…』



と言えばそれまでであろう。




それか私は仲がいいと思っていたがさして樋口くんはなんとも思っていなかったか?




否定的な感情が浮かんでは消えない。




とりあえず樋口くんの仕事内容とたらふくお酒と料理を嗜んだ女子は解散することとなった。




「次、会う時は同窓会ね!

ちゃんとみんな参加してよね」



としっかり者の誰かが言って解散となった。

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