第二話

今日はバイトがあった。

同窓会のことが頭から離れなかったが



小さな町に住んでいたのでみんな高校までほぼ一緒のようなものだった。



高校を卒業してからは流石にみんなバラバラになったが、県外に出た人など様々な道を歩んでいる。



私も普通に働いていたらもう少し気持ちよく同窓会にいけたのかな?



と思ったりもした。



でも普通って一体なんだ?



普通って…

ふつうって



紗羅の気持ちが複雑であることを物語る『普通』という言葉。



正社員として働くことが全てじゃない


いや、働いている人はとても尊敬する。

私が耐えられなかったことに今日も耐えているのだから。



そんな複雑な気持ちを抱えたまま、同窓会に行く予定が決まった。




『樋口玲央くんって覚えてる?

ほら、紗羅仲良かったじゃん!』



『うん、覚えてるよ。

仲良かったかは不明だけどね』




『えー!

仲良かったじゃん、みんな付き合ってるんじゃないかって噂してたよ?』




樋口玲央…



忘れるわけない。


なぜなら私がずっと好きだった人だからである。



将来の夢は?


と聞かれたら小さい頃


「玲央くんのお嫁さん」



と答えていたくらいだ。



中学生の頃、

「20歳になった時、お互いに好きな人がいなかったら結婚しよう!」



と玲央から言われた。



中学生の頃の小さな口約束である。




でも紗羅はしっかり覚えていた。

しかし、今年21歳になる。


20歳にはなった。

高校を卒業してから玲央とは連絡を取っていない。




『そう言えば、樋口くんがどうしたの?』



玲央くんと呼ばないのは密かな反抗心からであった。



『いやさー、同窓会来るみたいなんだよねー

楽しみじゃない?』



『そうなんだ。』



内心嬉しかったが両手を上げて「やったー」

と言えるほど子ども心は残っていなかった。



樋口くん、来るのか…



懐かしいな!

と思ったのが率直な感想であった。



友達とはそのあと、世間話を少しして『また、連絡するね』



で終わった。




紗羅はみんなとの再会も嬉しかったが、玲央と久しぶりに会えることに高揚した。



高校を卒業してから3年の月日が流れていれば何かが変わっている。



紗羅は心の不調により、恋愛から遠ざかっていたが。



恋愛ってなんだっけ?

好きってなんだっけ?



心に問いかけてみたが結論は出なかった。



同窓会に行くことにしてよかったなと少し思ったが、これがどういう気持ちかはわからなかった。




ただ、みんなとお酒が飲めれば楽しいのか?



降ってわいた『樋口玲央』というワードに気持ちが昂ったのか?



なんとなく参加の同窓会から『意味を持つ』同窓会へ変貌した。



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