2:アオイちゃんは「慈悲」を与えた


 ある日、昼寝をして目が覚めたらフタナリになっていた。

 思うに、これって男? 女? というか、それ以前に…。


「なぁ、ここはどこだ? というか、俺はなぜこんな姿してる? お前たちは何者だ?」


 見たことのない場所で、見たことのない連中に取り囲まれ、見たことのない姿。ついでに、聞いたことのない甲高い声。

 ヤバい、何一つ分からない。


「我が主様! 貴方様は今まさにご帰還なされました。まだ記憶が混濁なさっておられるようです」

「我らが主様、貴方様はまさしく我らが主様でございます!」


 …………。

 こいつら、一つくらい聞かれたことに答えろよ。何一つまともな情報がないぞ。




「はぁ!? 俺が魔王だ?」

「陛下。貴方様こそが我らが王でございます」

「あ? ただの王なのか?」

「いえ、陛下は紛れもなくこの世界を統べる魔王様でございます」

「だから魔王って何なんだよ!?」


 こいつらに好き勝手にしゃべらせると何も得られないと分かったので、一つひとつ質問することにした。


「この国はザワート大公国、都のアオハは海運で栄えております」

「ならば王ではなく大公ではないのか?」

「ま、魔王様の前では大公など吹けば飛ぶような…」


 で。質問してもこのざまだ。

 どうやら一筋縄ではいかない状況なのは分かって来たけど。



 俺と三人のやり取りを語っても時間の無駄なので、聞き出した内容をまとめておく。


 現在俺と三人がいる場所は、ザワート大公国とかいう国の都アオハ。海に面した街を見下ろす、王宮の塔の上だという。

 そこには五百年前から、主のいない塔が建っていた。

 塔の主は、かつてこの世界で覇を唱えた最強の魔王。その魔王は、己の限界を超えるためと称して五百年前に姿を消したらしい。

 で。

 魔王復活の気配を感じとった三人がやって来て、今ココ。



 荒唐無稽過ぎてツッコむ気にもなれない。



 ザワート大公国は、その名の通りのザワート家が数百年にわたり代々治めて来た…という。

 中継港を抱えるものの国土は狭く、周辺国の圧迫を受け続けていた。

 そして一年前、とうとう隣国のタチマ公国に攻め込まれ、大公は捕虜となった。


 ただし、タチマ公国はザワート大公国よりも国力は低く、本来なら攻め込むだけの力はない。

 そのパワーバランスをひっくり返したのが、魔人と呼ばれる者たちであったという。


「魔人は我々の攻撃をはね返し、わずか三名で我が殿下を拉致したのです」

「何だそりゃ。じゃあ、ここも危ないのか?」

「我々は先代の大公殿下より国を託された者。魔人に対抗する手立ては他にないと覚悟を決め、いにしえの魔王様をお迎えに参りました」

「いにしえ? 俺はただの大学生だぞ? 俺が魔人と戦う? もしかして、お前らが俺をここに呼んだ!?」

「陛下のお力で攻め込んだ敵軍は殲滅されました! 後はにっくき魔人のみ!」

「我らが忠誠、魔王陛下に捧ぐ所存にございます!」


 話が元に戻った…というか、悪化した。

 いや。

 とりあえず、こいつらが俺を魔王だと思っていて、そして魔人を倒してくれると勘違いしている、それは分かった。


「我々に陛下をお呼びする力などございません。五百年の期限を違わずご帰還なされた陛下の御叡慮に、我々一同深謝申し上げる次第でございます!」


 そして、俺自身の意志でここにいるって?

 そこはお約束で、おお異世界の勇者よーとか、クソくだらない茶番劇じゃないのか。


「……端的に聞くが、お前らには俺が魔王に見えるのか?」

「は、はい! 何という神々しいお姿でございますでしょうか!!」


 ……………。

 三人の視線が下半身に向いているのが気になってしょうがない。あ、もちろん今は裸じゃない。

 どういうことなのか分からないが、気づいたら服を着ていた。一瞬だけスカート姿になって、すぐにジーンズに替わった…と思う。だから股間はそそり立ってもいない。いや、中で立ってる…って、どうでもいいだろ。

 ただ……、股間よりも胸を締め付ける下着にものすごい違和感。何これ、そもそも股間が隠れて見えないんだけど。


「俺が思うに、魔王ってのは強そうで怖そうな奴だろう? こんな自分のようにしょうもない奴なんて、似ても似つかない」

「え…」

「ま、魔王様、いったい何をおっしゃられますか。我々一同、今にも消し飛ばされそうな力を感じておりますが」

「はぁ!?」


 三人は血走った目で、相変わらず俺の股間を凝視する。

 普通に隠れてるぞ? デカすぎてちょっとテントは張ってるけど、いったい何……って!?


「ああ魔王様! も、もう我慢できません、どうか、どうか私めにお慈悲を!」

「魔王様、わ、わたくしから!」

「陛下のお慈悲を我にどうか!」

「な、何なんだよお前ら! 慈悲!?」


 その瞬間だった。


 どういうわけか、俺は「慈悲」を理解した。

 そして、その方法も知っていたのだ。


「ああああああ!」


 下半身に意識を集中させる。

 ズボンの中にしまったままの俺の聖剣に命令を出す。

 するとすぐに、何かに当たり中に突き通っていく感覚。


「う、動いてます!」


 全く理解できないが、俺はズボンの中から取り出すこともなく、側に控える三人を同時にかき回している。

 三人は荒い息を吐きながら地べたに転がり身もだえる。

 なんて異様な景色なんだ。

 だが。

 どういうわけか、俺自身は全く興奮することもなく、やがて――――。


「あ、あああぁぁぁあああ!」


 どうやら出たらしい。

 ズボンの中に埋もれたままなのに…、だ。

 どうなってるんだ、これ。慈悲? こんなのが、慈悲?




「あ、ありがとうございます、我らが主様」

「陛下のお慈悲、確かにいただきました」

「誰よりも早くお慈悲をいただき感激でございます!」


 俺がいきなりアレした三人の女たち。

 お慈悲お慈悲叫んでいるので、一応は同意の上ということになるらしいが、注ぎ込んだ側である自分は違和感しかない。そう、俺は何も同意なんてしてないからな。


「事後にする話じゃないが、慈悲って何だ? というか、お前らの名前も聞いてない………って!?」


 気まずいのでいろいろ話し合おうとする。

 しかし、目の前で倒れて悶えていた三人は、赤黒いゼリーのようなものに包まれて、あっという間にブヨブヨした巨大な塊になってしまった。

 またわけの分からない光景。というか、今度はグロいぞ!?




※どこまで修正すればいいのか手探りでござるよ。

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