第18話 大変ですアーサー殿下
私はすぐにウォークインクローゼットの転送装置へと飛び込んだ。
⸺⸺アーサー殿下の自室⸺⸺
「大変ですアーサー殿下! いらっしゃいますか!?」
私は部屋をキョロキョロと見渡す。すると、洗面所から歯を磨いている彼がひょこっと顔を出した。
「す、すみませんこんなタイミングで来てしまって……!」
私がそう言うと、彼は手のひらをこちらへ向けて“待て”の仕草をして、また洗面所へと消えていった。
⸺⸺3分後。
「おはよう、待たせたな。一体どうしたんだ?」
まだ寝間着で髪も整えていないラフな彼が現れる。そんな彼も素敵……じゃなくて!
「エミリアが退学になっちゃいました……」
「何!?」
ここで一通り事情を説明した。
⸺⸺
「バッドエンドの展開をそのまま突っ切ったか……」
殿下はそう言って苦い顔をする。
「はい……久々にループしないとです……」
「そうだな……だがその前に作戦会議だ。アランが何を考えているのか知る必要があるな……それと、エミリアにも不貞行為をしないよう言っておかねば。次のループではそれを目標にしよう」
「そうですね、エミリアには私が釘を差しておきます」
「ではアランは同じ騎士科の俺が探ってみるとしよう」
「お願いします! では、ループをしたら時を進めるので、私の部屋に集合で」
「そうだな、俺もいないと進められないんだったな。了解した」
私たちは顔を合わせてうなずくと、懐中時計を起動させた。
⸺⸺
ループ後、半年先まで時を進めた。
そしてエミリアの婚約の報告を受け、祝福をする。
その後に、前回は言わなかったことを付け足しておいた。
「エミリア、よく聞いて。貴族の結婚は親が勝手に決めるから、愛がないこともよくあるの。それは、本人たちが決めたことじゃないんだからしょうがないことだと思う。エミリアが両想いになれるのが一番良いけど、もしそうじゃなかったとしてもめげないで。自分を見失わないで、ポジティブに考えるのよ」
「ディアナ……うん、分かった。アドバイスありがとう!」
エミリアはいつものように私の話をうんうんと聞いてくれた。
素直で良い子なんだ。私だって幸せになってほしいよ。
そしてその翌月にエミリアがデートの報告をしてきたが、彼女は意外にサバサバしていた。
「ディアナの言う通りだったの。アラン様は私のこと好きじゃないみたい。だからアラン様のお母様のお顔を立てるために、2人とも機械みたいにスケジュールをこなして、必要最低限のデートプランが終わったら、さっさと解散になったわ」
「おぉ、エミリア、なんだかたくましく……」
「それでね、ディアナの言う通り、前向きに考えることにしたの。アラン様は特に私に何かを要求してくるんじゃないし、このまま結婚したらそれはそれで私も好き勝手できるんじゃないかってね」
「そっか……強くなったねエミリア……。でもね、気をつけて。貴族の結婚はそうだからこそ、不貞行為が
「爵位剥奪……それは嫌だなぁ。うん、分かった。浮気は絶対しないようにする!」
私はふぅっと一息つく。これで多分エミリアがバッドエンドを迎えることはないだろう。
私の方は上手く誘導できたっぽいけど、アーサー殿下はどうかな?
そんなことを考えながら、私は今夜も彼の部屋を訪れた。
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