第13話「消えた姉とかぐや姫、そしてブルームーン。五月に降った青い雪の正体とは?」

 予定どおりの時刻に瑠璃をむかえに行き、居酒屋へ向かう車内で父に聞いた事柄を彼女に話した。瑠璃は言う。


「おそらく二年前に降ったものは、記憶の粒子よりは現実に近いものだと思う。ネット上にも少ないけれど、証言はあったから」

「記憶の粒子は瑠璃にしか視えないもんね」


 瑠璃はしばらく沈黙したのちに口を開いた。

「あの青い粒子の降った日は、二〇二一年の十一月の満月の日なのだけど、その日は海外のある集団内ではブルームーンの日と呼ばれている。丁度、一九二一年の五月の満月もブルームーンの日で、私の過去視の力もブルームーンの日を境に発現した。その集団で使われていた暦は農暦というもので、中世の太陰太陽暦と似た性質を持っている古い暦らしい」


「ブルームーンかぁ。なんかやたらと月が関係してるよね」

「そうだね。サクヤの見た目、成長速度の相違という話はかぐや姫に似ている。私も同じような経験がある」

「そうなの?」


「私の自我の芽生えは生後三か月。言語を話し始めたのも、記憶が残っているのも全てそこから。もしかすると竹取物語は、荒唐無稽なフィクションではなくて、実際の話を基にした物語なのかもしれない」

「たしか竹取物語って作者がわかってないんだよね」

「うん、原本も散逸している」

「なんか怪しいよね」

「そうだね」

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