第31話 世界有数の大国の都

「こ、こ、ここが、王都ヴェルジュなのですね……」


世界有数の大国ヴィヒレア連合王国の都、ヴェルジュ。高くそびえ立つ沢山の壮麗な建物。キレイな石畳が敷き詰められた道。そこを行きかう多様な人々。初めて見る大都会の賑わいに私は圧巻されていた。


「見本市の会場はあそこの広場だ」

「あ、あそこですか。なんというか、とてつもなく広くて……」


 あんな凄い場所に市を出すというのか……。開催は明日なのだが、今から緊張してしまう。


「今日は設営準備だけで終わりだから、早く宿に戻って身体を休めよう」


 ヴェルジュに来てから、アレッサンダル様は私に数人の護衛をつけた。

 物々しいことは嫌だったのでお断りしたのだが、聞き入れてもらえず、その時は若干不満を感じた。しかしここは、想像を絶する大都会だ。護衛がいなければ、怖くて歩くこともできそうにない。こんな風だから、私はセリーナに田舎臭いと言われ続けたのだろうか?


「とりあえず、僕たちの設営場所は向こうの区画だから、早く準備を終わらせて宿に戻ろう」


私は頷いて、アレッサンダル様の後についていった。



「よし! これで今日の準備は終わりだな。後は明日の朝にやればいい!」


 アレッサンダル様が、達成感に満ちた笑顔を浮かべている。

 それを見ていた私の口もとにも、自然と笑みが浮かんだ。

 ありがたいことに、準備をしている時は作業に集中できたので、ヴェルジュの喧騒は気にならなかった。

 しかし、こうして改めて見回すと、他のブースには見ているだけで買いたくなってしまう魅力的な特産品が沢山ある。そんな中で、私が作った香具なんかを並べてしまって大丈夫なのだろうか?

 場違いだという不安が襲ってきて、再びヴェルジュの喧騒が気になり始めた。

 ……こんな立派な所で、私の作ったものなんか売っちゃいけない。そんな思いが心をかき乱す。


「ラヴェンナ、大丈夫かい?」


アレッサンダル様の声に、ハッと我に返った。


「君の作った香水やアロマオイルが、皆が復興のさじを投げていた、不毛の地獄バルダハール領を救ったんだ。だからもっと自信を持ってくれ」


 アレッサンダル様のお言葉を聞いて、気持ちがだいぶ楽になった。それでも場違いだという不安は完全には消えていないが……。


「僕はこれから領主同士の会合があるから、行ってくる。戻りは日が沈んだくらいになるから、先に宿に戻っておいてくれ。……ラヴェンナの護衛を頼むぞ」


 物々しい表情で、護衛の方々が私を取り囲んだ。

 少し大げさな気もするのだが……複雑な気持ちになりながら、会合に向かわれるアレッサンダル様を見送った。


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