第2話

 当日、まだ集合時間には早い時間に着いてしまったため、近くの公園のベンチに腰を下ろしてスマホをいじっていると、同じジャージを来た人がこちらに向かって歩いてくるのに気づいた。


 ジャージ姿になっても、やっぱり影森は相変わらずのボサボサ前髪に、マスクをしっかりつけている状態だった。


 ウチの学校は体育も男子と女子別々で行うから、影森のジャージ姿はそこそこ新鮮に見えた。


 影森の姿が目に止まったウチは、ベンチから腰を上げて、彼に歩み寄った。


 とりあえず挨拶はしとこうと思って、「おはよ〜、今日よろしくね」って声をかけた。



「……うん。こちらこそよろしくね」



 前日にこの公園を集合場所にしようって言った時は、コクンと頷くだけだったから、返事は来ないもんだと思ってた分、ちょっとだけびっくりしちゃった。


 思わず彼の顔を見あげてしまったけど、ウチの視線はその厚い前髪でシャットアウトされているから、こっちの視線には気づいていないだろう。


 ちょっと失礼な態度だったかなって思って、ウチはブンブンと首を振ってから、時間を確認しようとスマホにまた目を戻した。


 ちょうど予定の時間の五分前。


 そろそろ入っても良さそうかなと、保育園の方へと目をやった。



「すごい首振ってたけど、何かあったの?」


「……ナ、ナンデモナイヨ」



 恥ず。見られてたわ。


 やっぱその前髪でも見えてはいるんだ。


 ……こっちからは見えないのに、そっちからは見えてんの、なんかズルくない?


 てか意外と落ち着くような、良い声してんのね。



「あっ、ちょっと待ってよ」



 どぎまぎしているウチを置いて、先に保育園の方へ進んでいく影森を慌てて追いかけた。

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