第三十話「作戦」

 砂漠の夜を過ごした俺とフィーレは寝苦しさから起床した。

 

「…………暑い」

「……ですね」

 

 砂漠は何故こうも気温の変化が激しいんだ。夜は寒いし、朝は暑い。これが砂漠ってやつなのか。

 

「……柊さん」

「ん? どうした、フィーレ」

「なんか変な音が聞こえませんか?」

「え?」

 

 俺はそう言われて耳を澄ます。…………確かになんかミシミシという音が聞こえる。なんだこれ。

 

 と、思っていると砂の家が倒壊した。俺とフィーレは大量の砂に埋もれた。

 

「「……………………ぷはぁっ!」」

 

 死ぬかと思った……! そうか! 砂が乾燥したのか。俺が作った砂の家は支えとなる部分を水で固めていた。しかし、陽の光にあてられ水が乾燥し、倒壊した。

 

「…………もう砂で家を作るのはやめよう」

「……はい」

 

 俺とフィーレは砂がトラウマになった。

 

 ***

 

 砂漠を暫く歩いた俺とフィーレは遂に見つけた。

 

「…………見ろ! フィーレ! 街だ!」

「……やりましたね柊さん!」

 

 ついに砂以外の景色が見えた。石造りの大きな街だ。これは『アレン王国』よりも大きい。

 

 早速向かう俺とフィーレ。……もちろん足が埋もれて街が見えてからさらに一時間掛かった。

 

 ……

 …………

 ………………

 

「……ダメだ」

「なんでだよ! 俺ら怪しいもんじゃないぞ!」

「そうですよ! 柊さんの言う通りです! 私達は敵じゃありません!」

 

 俺とフィーレは絶賛門番に止められていた。

 

「怪しさしかないだろう! なんだその格好は! 貴様ら兄妹か?」

「「違います」」

 

 誰が兄妹だ。こんな手のかかる妹が居てたまるか!

 

「こんな頼りないお兄ちゃん居てたまりますか!」

 

 お前思ってても口に出すなよ……ちょっと傷つくだろ……。

 

「なぁ門番さん、俺ってそんなに頼りないように見えるか?」

「知らねーよ! でも……お嬢ちゃん、それは兄ちゃんが可哀想だから思ってても口には出さない方がいいと思うぞ?」

「門番さん…………!」

 

 俺は門番さんの言葉に思わず涙が……まぁ出ないけど。

 

「さすが門番さんだ! ってことで、はいってもいいですか?」

「それは別だ」

「ですよねー」

 

 ちぇっ。もしかしたらって思ったのに、ちゃんと仕事とプライベートは分けるタイプかこいつ。

 

「で、どうしますか? 柊さん」

「……この門番、頭固そうだ。出直すぞフィーレ」

「……頭が固くて悪かったな」

 

 俺とフィーレは門番から離れる。

 

「…………これからどうしますか、柊さん」

「………………俺に案がある」

 

 何も入口は一つとは限らない。

 

「フィーレ、バレなければ犯罪は犯罪じゃないんだ」

「……え、柊さん何する気ですか? ちょっと嫌な予感がするんですけど」

 

 正式に入れないのなら、別の入口を作ればいい。不法侵入というやつだ。仕方あるまい、だってあの門番頭固いし。あのまま話してても埒が明かない。俺とフィーレは空腹の上、疲労が溜まっている。このまま砂漠で足を止める訳にはいかない……となるともう不法侵入くらいしか無い。

 

 ……

 …………

 ………………

 

 俺とフィーレは街の裏側に来た。城壁が高く五十メートルはある。これを乗り越えて侵入はまず無理だ。大型の巨人じゃ無ければな。

 

「――いいか、作戦はこうだ」

 

 俺はフィーレに作戦内容を伝える。……と言っても俺も別に頭脳派という訳ではない。作戦というにはあまりにもシンプル。フィーレの『ファイアーボール』を上空に放ち、騒ぎを起こす。その隙に別の入口から俺がスキル『イリュージョン』で壁に丁度人が入れるくらいの小さな穴を開ける。

 

 我ながら完璧な作戦だ。

 

「よし、早速作戦開始だ。フィーレ、頼む」

「はい! ……柊さんを信じます! 『ファイアーボール』!」

 

 フィーレは上空に炎の玉を打ち上げた。

 思った通り、壁の内側から住民らしき者達の『なんだ!?』『何事だ!?』などの声が聞こえてくる。その声を確認した俺達はすぐさまその場を離れ別の場所に移動する。

 

「……よし、この壁でいいだろう」

 

 俺はある程度離れたところで壁に穴を開ける。

 

「『イリュージョン』!」

 

 音も無く、壁に人が入れる穴が空いた。

 

「よし、フィーレ入るぞ」

「はい!」

 

 俺とフィーレは空いた穴から壁の内側に侵入する。

 

 これでバレずに侵入出来たはず……!

 

「………………柊さん」

「…………ああ」

 

 俺とフィーレは武装した兵達にガン見されていた。

 

「……は、初めまして」

 

 どうやら俺が開けた穴は王城内部に繋がっていたようだ。恐らくエントランスにあたる場所だ。警備兵も寛いでいる者が数名居た。まさか壁から人が出てくるなんて思ってもみなかっただろう。

 

「…………侵入者だぁぁぁぁぁぁ!! 捕まえろぉぉぉぉぉ!」

「柊さんのばかあああああああああ」

「すまんんんんんんんんんんんんん」

 

 俺とフィーレは抵抗する間もなく捕まった。

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