第八話 「大人の宿屋」
俺達は『転生者』について情報を交換する。フィーレはよく分からないという顔だ。フィーレには後で説明するとしよう。
「じゃあまず、お前いくつだ?」
「私は十二だ! それとお前じゃない! 特別に珠希と呼ぶことを許す!」
「じゃあ俺のことは柊でいい」
「了解した!」
俺達はまず、他に転生者を知らないか情報を交換する。
これはお互いに知らないという結果で終わった。
次に<職業>についてだ。どうやら珠希の職業は<人形使い>ということらしい。ステータス画面を見せようとしてくれたが、どうやらこれは転生者同士であっても見ることができない様だった。
「……珠希はいつ転生した?」
「私は一年前だぞ。柊は?」
「俺は二ヶ月程前だな」
「では私の方がこの世界の先輩だ! 敬語を使え!」
その理論だとフィーレは大先輩になるがいいのかよ。
俺はあえて無視をし、会話を続ける。
「では最後だ。これは知っていれば……でいいんだが、レベルが四十から上がらないんだ。何か知らないか?」
俺はレベルが上がらないことについて相談する。あまり期待はしていないがな。
「私の推理ではレベルアップは十、二十、三十……とレベルが上がるに連れて必要経験値が上がるものと見た!」
「…………そんなことは知っている」
「なに!? そうなのか!?」
はぁ……やっぱりダメか。俺はレベル四十から全く上がらないでいた。これは必要経験値が足りないから、という訳では無さそうだ。俺はレベル四十になってからかなりのモンスターを倒してきた。普通ならもう三は上がっててもおかしくない。いくら必要経験値が上がったとはいえ、これは流石になにか条件があると見るべきだ。
「……よし、もうこれ以上は得られる情報は無さそうだ。じゃあな珠希。達者でな」
「おいおい待ちまえよ柊くん!」
と珠希が俺のローブを掴んできた。
「……なんだよ」
「私はようやく同郷の者と会えたんだ! せめてもっとこう……何かあるだろう!?」
「…………ないな」
「なんでよ!」
いや、ほんとに無いんだよな。……ただ十二歳の子供を放っておくのは流石に不味いか? 日本ならまず有り得ないな。だが、ここは異世界。珠希は強い。誰かに襲われるということはないとは思うが……。
「……分かった。なら来るか? 俺のとこに」
「え! いいの!? やったー! ここゴーレム作るくらいしか遊びなくて退屈だったんだよね! ありがとうお兄ちゃん!」
口調がもう小学生だぞ……。マッドサイエンティストの設定はどうしたんだよ。
「一応先に言っておくが、宿は相部屋だ。金がないからな」
「お金……これくらいじゃ足りないかな?」
と珠希は後ろの方を指を指す。そこには金銀財宝が山になって積まれていた。
「お、おい!! どうしたんだよこれ!!」
「時々冒険者とか盗賊とかが来るんだよ! ゴーレムで追い返したら、命だけは~! とか言って置いていった物だよ」
おいおいこんなにあれば換金したらいくらになるんだ!? 今の宿が五千ルピ。この財宝を換金すれば、余裕でシャワー付の宿に泊まれるぞ!!
「よし、珠希。その財宝をゴーレムに運ばせろ」
「てことは着いて行っていいんだよね!」
「当たり前だ何を言ってる。俺達はもう出会った時から仲間……いや、家族だ」
「じゃあお兄ちゃんって呼ぶね!」
「……それは勘弁してくれ」
こうして
「仲良くして下さいね、珠希ちゃん」
「…………ねぇお兄ちゃん、この女誰?」
「ひどい!」
「仲良くしろ、お前の理論で言うところの大先輩だ」
「よろしくね先輩」
「は、はい。フィーレって呼んでください」
「先輩!」
完全に子供に遊ばれているなフィーレのやつ。
***
「全て合わせて一千万ルピになります」
「…………なん……だと」
一千万……これならシャワー付の宿も余裕じゃないか。
俺達は冒険者ギルドに珠希の財宝を換金しに来ていた。冒険者ギルドに入るや否や、中にいた冒険者達は言葉も出ない様子だった。ゴーレムが手に財宝を持ち入口の前に居たからだ。流石に入っては来れないということで、冒険者ギルドの前で鑑定してもらうことになった。
「しかし、一千万ルピか……いきなり大金持ちだな」
「私のおかげだよお兄ちゃん! 褒めていいよ」
「……まぁそうだな、よくやった」
俺が珠希の頭を撫でると、嬉しそうにする。……さて、これからはシャワー付の宿に泊まることになりそうだな。
「……あの……相部屋ではなくなるのでしょうか」
「ん? ああ、そうだな。今まで気を遣わせて悪かったなフィーレ。あと……例の件も悪かった、すまん」
「い、いえ! 大丈夫です! 気にしてません……から」
「なに? お兄ちゃんなんのこと?」
「何も無い。さぁいくぞ。あとお兄ちゃんって言うのやめろ」
「嫌」
暫く待っていると、受付のお姉さんが金貨を大きな袋に入れて持ってきた。
「これが金貨百枚です」
「おお! 金貨百枚!!」
金貨一枚で十万ルピ。まさかこんなに大量の金貨を見れる日が来るとは……。
俺は受付のお姉さんから金貨が入った袋を受け取る。
「――重!?」
STRにかなりステータスを振っている俺ですら、思わず声が出る重さだ。……受付のお姉さんはそれを片手で軽々持っていた。受付のお姉さん……力持ちなんてレベルじゃないだろ。この人を怒らせるのはダメだ。多分殺される……。
「では、私は受付に戻りますので」
「ありがとうございました」
受付のお姉さんはギルドの中へ戻って行った。
「じゃあとりあえず、宿を探そう。部屋は別々でシャワーも付いている方がいいな」
「私お兄ちゃんと一緒で!」
「無理」
「なんでぇー!?」
「フィーレと同じ部屋だ」
「ええー。先輩と?」
「そんな事言わないで下さい……部屋でお話ししましょう」
「ん~分かった。仕方なくね」
「ありがとうございます」
珠希の言葉にフィーレは笑顔で返す。
フィーレは大人だなぁ……。まるで一瞬で拒否った俺が
…
……
………
「――いらっしゃい!」
「あのー、宿借りたいんですが」
「一泊三万ルピだよ!」
「はい、とりあえず金貨十枚置いておくので、継続でお願いします。もし必要になったらまた言ってください」
店主は驚いていた。金貨十枚。百万ルピだ。一泊が三万ルピだからだいたい一ヶ月分って所だな。いちいち何回も手続きするのも面倒だしこれでいいだろう。
「ま、まいど! 部屋は百一号室と百二号室だ。シャワーは部屋に付いているからね」
店主は気前よく教えてくれる。
……
……
………
「すげぇー!」
ガラスの窓に、シャワーにトイレ! まさに異世界だ!
………って言いたい所だが――
「――これまんまラ○ホじゃねぇかっ!!!」
風呂は何故か外にある。入れば隣の部屋から丸見えである。ベッドはピンクで壁の色なんかもピンク色だった。極めつけは、壁の模様だ。ハートになっていた。
「おいおい……ここで一ヶ月とかキツすぎんだろ……」
ん? 俺の部屋がこれってことはまさか向こうも――
俺は二人の部屋に突撃した。
「――おいお前ら! お前らの部屋はだいじょ………うぶ……か?」
「あれ? どうしたのお兄ちゃん。寂しくなって会いに来たの?」
「え、そうなんですか?」
おい……嘘だろ。
なんで俺の部屋だけラ○ホ仕様なんだよ……。
俺はその場に膝から崩れ落ちた。
◇◇◇
《
Lv.40
HP【4900/4900】 MP【0/0】
STR【500】 ATK【500】
VIT【50】 DEF【50】
INT【50】 RES【50】
DEX【50】 AGI【50】
LUK【0】
アビリティ:【不器用な魔法使い】
アビリティ:【魔法使いのとっておき】
アビリティ:【魔法使いの最終手段】
アビリティ:【魔法使いの掟破り】
スキル:【ミスディレクション】
装備:【戦士のピアス】
◇◇◇
【不器用な魔法使いLv2】
・与える物理ダメージ3倍
【魔法使いのとっておきLv2】
・物理ダメージのクリティカル率100%+10%ダメージ上乗せ
【魔法使いの最終手段】
・杖所持→未所持になった場合のみ、10秒間物理ダメージ5000%上昇
【魔法使いの掟破り】
・魔法使いに与える物理ダメージが500%上昇し、魔法使いから受ける魔法ダメージを0にする。
スキル【ミスディレクション】
・【MP消費0 相手の視界から一時的に消えることが出来る。
※ただし、相手との力量で効果変動
【戦士のピアス】
・物理ダメージ5%上昇
◇◇◇
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