第17話 兄ちゃん友達は?
翌日早朝、やはり兄ちゃんの小説が気になるのでページを確認する。
今さら後悔しても仕方ない、知ってしまったのだからと開き直った。
▽▽▽
妹が好きだ、はっきり言える、誰がなんと言っても好きな物は好きなんだからしょうがない。
春は俺の全て、春が居なかったら生きていけないのだ、春……。
春は俺にいつも言うのだ。
「お兄ちゃん、彼女とか作らないの?」
今朝も食事をしながら同じ様に言ってくる。
そう言われる度に俺は傷付く、心が痛むんだ。
俺にはお前しか居ない、春しか居ないんだ、俺はそう言いたい。
恐らく春は俺に対して恋愛感情はないだろう、一度疑った事もあるが……。
そんな春に俺から好きだなんて言えない、春を悩ませたくない、そして春を失いたくない春に嫌われたくない。
せめていつでも春と一緒に入れればと俺は週末のツーリング誘った。
「うーーん特に予定とか無いし、いいよお兄ちゃん」
少し考えて笑顔で俺にそう言った。
天にも昇る気持ちだ。
春の為に1年間頑張った甲斐があった。
これでいつでも春と一緒に居られる。
この1年間辛かった、週末は春とあまり一緒に居られなかったから。
春が一人でいる時間も長かっただろう、だからなるべく週末以外は一緒に居た。
春が居るときはいつでもリビングに降りて来るのを待っていた。
「ねえねえお兄ちゃん」
リビングで春は俺を見るとそう言っていつも喋って来る。
俺はそれをいつでも待っている。
中学の時、春には彼氏は居なかった。
居なかったと断言出来る。
理由は、後輩等にそれとなく確認したが見たことも聞いた事も無いと言われた。
そして春が出掛けたりした時後を……もとい、偶然、あくまでも偶然街中で見かけた時はほぼ一人、たまに女子と一緒だった所しか見ていない。
しかしその調査も春が3年の時はあまり出来なかった。
まあ受験生だったから可能性は低いと信じて井田が、やはり万が一って事もある。
だから俺は1年間それだけが気掛かりだった。
そして今、高校になってその危険は中学の時よりもかなりの確率で増加している。
計り知れない程の脅威が迫っているのだ。
俺は春に幸せになって貰いたい、だから春に彼氏が出来て、そいつが俺よりも優しく俺よりも頼りがいがあり俺が納得いく男ならば、潔く身を引く……辛くても……心が張り裂けても……応援する。
もしもそんな奴が現れたら俺は勝負する!
そして必ず勝つ!
春に俺よりもいい男はこの世に居ないと思わせるんだ!
俺はこの1年その為にやって来た。
世界の誰よりも春を大事に、世界の誰よりも春を愛している、それだけは誰にも負けない。
さあ、勝負だ! かかってこい、俺は誰にも負けない俺はTUEEEEEEE!
△△△
「兄ちゃん……………………最後は……何?」
私は思わず画面を消した。
ちょっと読んでいられない、
てか、これって小説?
兄ちゃんの所信表明演説だよね?
「ううう、昨日の夜に少し兄ちゃんの事見直す……って思ってたのに……、ここから私が小説を読んで兄ちゃん好きかも? ってなるんじゃ無いの? ここまで来て最後のこのTUEEEEEって、ない、無い、絶対無い、あり得ない。なんだこれ……?」
あーーーもう兄ちゃんに彼女が居ないってひょっとして私のせいじゃなくてこれなんじゃない?
そういうとこだよ兄ちゃん。
佳那さんもやっぱる振られたんじゃなくて振ったんじゃ無いのかな?
ずっと私の事話してるとかさ?
兄ちゃんってひょっとして……空気が読めない子なの?
「私と出掛けてる時は比較的空気読んでるよね? あーでも時々行き過ぎる所があるよ……私を毎週連れ回そうとしてたし……」
えっと……そう言えばあまり友達の事喋らないよね兄ちゃん…。
ひょっとして、兄ちゃんって実は……ボッチなの?
だから私と出掛けようとしてばかり
え? 兄ちゃんひょっとして私しか遊ぶ相手が居ないとか?
「ヤバくない? 兄ちゃんマジでヤバくない?」
私の事が好きすぎるが故に、兄ちゃんがボッチに?
「どうしよう、本当に心配になって来た。もういっそ兄ちゃんに聞いてみるか?」
でもどうやって?
『兄ちゃん彼女居ないって言ってたよね』
『うん居ないよ』
『じゃあ友達は?』
『うん居ないよ』
聞けない……。
そんなセンシティブな事妹でも聞けない。
「え、どうしようって……どうしようもないよなあ。 兄ちゃん……私の幸せ願う前に、自分の幸せ考えようよ……、えっと……どうすんの本当に私に彼氏が出来たら」
私が居なくなったら……兄ちゃんが完全にボッチになってしまう。
わ、私だって兄妹として兄ちゃんの幸せは願ってるんだよ~~、頼むよ兄ちゃん……。
「そんな年で今から妹に人生掛けないでよーー、責任感じちゃうじゃん」
私……兄ちゃん嫌いじゃないけど、兄ちゃんに一生付き合うつもりはないし、兄ちゃんの恋人になる気も全然ないよ?
昨日春ちゃんに少し嫉妬したりしたけど、だからって兄ちゃんと恋人同士になるなんて…………全く考えられない……。
「うーーーん……どうすれば良いかな……」
考えても無駄なのでそう言えばと現実逃避する。
久しぶりに兄ちゃんの小説のランキングを見た。
「うーーん可もなく不可もなくか……」
ランキングは下位の方に居るも、ブクマはじわじわ増えている感じ……。
「兄ちゃんいっそ小説でデビューとか出来ないかな?」
高校生作家、そしてアニメ作家とかになればなんてなったらモテるんじゃない?
声優さんと結婚する作家さんとか居るよね?
「そうか、それだ! この小説を人気作品に出来ないかな?」
上手く行けば兄ちゃんはボッチにならないかもだし、ダメでも何も変わらないだけだ。
兄ちゃんに彼女作れって言っても無駄だし、私と一緒に居たいって気持ちを変えるのも難しい。
この現状で出来る最善って……もうこれしかないんじゃ?
「でも問題はどうすれば兄ちゃんの作品が人気作品になるのか、まあそれが出来れば誰も苦労しないんだよね」
「うーーーーーーん……かといってどうすれば……」
私は無い頭で考えた。
「そうか……兄ちゃんの作品を好きな人って妹が好きな人なんだから私が可愛くなれば? それにはとりあえず私とデートする事が一番かもだよね? そこで兄ちゃんとイチャイチャすれば少しは人気が出るような小説が書けるかも知れない。
妹好きな人が喜ぶような作品が、春ちゃん可愛いいって言ってくれる人が増えるかも知れない。
よし! 春ちゃんをもっと可愛くする為に、私頑張る!! そして兄ちゃんの作品の人気を上げる。
そうだ、それが兄ちゃんの為になるんだ!
よし 頑張るぞ!
こうして私は気合いを入れて兄ちゃんとイチャイチャする事に決めたのだった。
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