第15話 兄ちゃんの元彼女? 登場!
「お兄ちゃん!」
「お、おにいちゃん……だと……」
なんか小説の春ちゃんの呼び名がお兄ちゃんだから、私もそう呼んで見ようと試みるが、なんか兄ちゃんの顔がひきつっているので、やっぱり止めた。
私と兄ちゃんは池袋へショッピングに出かけていた。
ちなみに乙女ロードには勿論行かない。
私は腐ってないからね、少しも興味は……全然……本当に、全く…………今は、興味がない…………でも兄ちゃんに内緒で今度一人で。
えっとそれはいつかまた……、今日は私の服を買いに来たのだ。
春真っ盛りだというのに、昨日はかなり寒かった。
初めてのツーリング、やはりインナーは大事って事が良くわかった。
勿論着る服も大事で転んだ時に破れにくい素材が良いらしい。
安全の事を考えて服はお兄ちゃんにアドバイスして貰う事にしよう。
兄ちゃんはもしもの為に破れにくい服が良いと言う。
そう言われるとちょっと怖いけど、昨日の兄ちゃんはかなり運転が上手かったのでそこは一応信頼はしている。
「所でさあ、さっきの呼び方って何?」
「え? いや、高校生になったし、なんか兄ちゃんだと子供っぽいかなって、どう思う?」
ある程度買い物が終わると兄ちゃんはさっきスルーした呼び方について聞いて来た。
小説に合わせて私が春ちゃんに近づけた方が書きやすいのでは? とは決して言えない。
なので子供っぽいからという理由を後付けしてみた。
「いや、はるの好きで良いけど……うーーーん、兄ちゃんの方がしっくりくるけどな」
「ふーーん、じゃあ今はまだ兄ちゃんにしておくかな」
お兄ちゃんって呼ばれたい訳じゃないんだ、やっぱり春と私は違うって事なのかな?
そう言えば今朝読んで思った……。
あんな感じで実の兄に言い寄られて、あんな感じで『うん』って普通に言っちゃう春ちゃんて……結構凄いのかも?
多分春ちゃんはお兄ちゃんが好きなんだろうな……。
ただねえ、兄ちゃん……現実はそんなに甘くはないんだよ?
だって私はまだまだ引いてるんだから。
でも、まあ彼氏も居ないし、兄ちゃんと遊ぶのは嫌いじゃないって言うのも事実……ハイハイ私もブラコンブラコン、今度ブランコに乗ってやるから!
そんな訳の分からない事を考えつつ買い物をしていると漫画みたいにお腹が鳴った。
「そろそろお腹空かないか?」
それを聞いたのか? 兄ちゃんはそう言う。
「う……聞こえた?」
「何が?」
「いや、別に聞こえてなければいい、そうだねえ、私中華が食べたいかなあ?」
「そっか、うーーんと、ああ、じゃあ小籠包の美味しい店があるからそこに行くか?」
「おーーー、ハフハフする奴だね、美味しそうだ」
ああ、これこれ、これが兄ちゃんと一緒にいる楽しさなんだ。
私が何かを言うと大抵それに答えてくれる。
小説に書いていた様に、いつも裏で色々調べてくれているんだろうな。
だからこれから一緒にバイクで色々な所に行かないか? なんて実の兄に付き合ってみたいな事を言われても私が断れなかった理由なんだよね。
だってさ、日頃からこれだよ? 兄ちゃんが1年掛けてくれたってさ、何か凄く期待出来るよね。
「よっしゃじゃ行くか」
そう言って兄ちゃんはスマホで場所を調べると、私の荷物を持ち少し前を歩く。
兄ちゃんは常に車道側を歩き、更に歩くスピードは私に合わせほんの少し前を合わせて歩いてくれる。
こういうさりげない優しさが兄ちゃんの良い所なんだよな~~。
同級生の男子と歩くと改めて思う。
こういう所で兄ちゃんと差が出るんだよね。
私はそのさりげなさに思わず感心させられてしまう。
兄ちゃん絶対にモテるんだろうな?
そう思いながら兄ちゃん後を着いて行くと……唐突に後ろから声を掛けられた。
「あれ? 海じゃない? うわーー久しぶり~~、元気してた?」
明るい女の子の声に私と兄ちゃんは振り返る…………あ、この人って確か。
「あ、ごめんデート中だった?」
私を見てそう言ってきたこの女子は、アッシュベージュのユルフワセミロングの髪、目はクリクリしているかなりの美人さんだ。
付けまつげがちょっと派手な、身長は160位? 私よりちょっと高い……ちょっとよ、ちょっとだけ……。
服装はシースルーのブラウスにデニムのショートパンツ……少し派手なイメージだけど足もウエストも滅茶細くてスタイル抜群だ。
いいな足長くて……。
「なんだ佳那か、久しぶりだな」
「何だって、まあそうね久しぶりだからつい声掛けちゃった。お邪魔して悪かったわね」
佳那……兄ちゃんがそう呼んだ美人さんを再度良く見つめる。
ああそうだ、思い出した。
以前は制服だったからわからなかったけど、この人は確か前に家に連れてきた兄ちゃんの元彼女さんだ。
兄ちゃんは否定しているけど……。
「あ、前に少しだけお会いしてます、私、妹です」
そう言うと、佳那は驚きの表情を浮かべた。
「えーー! じゃあ陽ちゃん? そっかあ……可愛いくなっててわからなかったよ」
「えっと、ありがとうございます」
どう考えてもお世辞のその言葉に一応お礼を言った。
「うん、見違えたね、前にチラッと見た時は制服姿だったから~~ごめんね分からなかった」
今日私は髪をツインテールにして、薄いピンクのタートルネックのニットセーターにチェックのミニスカートを履いている。
まあお互い様か。
「ありがとうございます、佳那さんもそのトップスオシャレですね~~」
「そう? これそこのショップで安く売っててね、スカートとかも色んなのが」
「──あのさ佳那……俺達そろそろ」
「あ、ごめんごめん、ついつい、じゃあまたね海、陽ちゃんもまたね」
「はい」
そう言うと佳那さんはこちらをチラチラ見ながら何度か手を振りつつ歩いて行く、それを私と兄ちゃんは見えなくなるまで見つめていた。
「兄ちゃん佳那さん綺麗になったね、振っちゃった事後悔してるんでしょ」
「……振っちゃうも何も……そもそも付き合ってもいない、数学教えてくれって言われて連れてきただけだよ」
兄ちゃんはそう言うが小説では私を諦める為にと書いてあった。
「ふーーん、でも佳那さんて今でも兄ちゃんに気がある見たいな雰囲気だけどな~~」
「そんな事ないよ、ほら行くぞ~~」
「はーーーい」
そう言って兄ちゃんは再び歩きだす。
佳那さんは中学の時より明らかに綺麗になっていた。
兄ちゃんは今も私と比べたんだろうか?
だとしたら完全敗北じゃん。
そしてあの佳那さんを見ても同じ気持ちなのか?
もしかしたらやっぱり後悔している?
兄ちゃんの今の気持ちは?
私は兄ちゃんが思っている程自分に自信はない……身長も低いし胸もない。
全体的に子供っぽい。
兄ちゃんは何であんな綺麗な人と私を比べたの?
ひょっとして兄ちゃんて……ロリコン? シスコンロリコンとか笑える。
佳那さんは最後に『また』って言っていた。
私はなんとなくそれが気になっていた。
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