第13話 一生一緒に?
少し気まずい……でもさすが兄妹といった所か? その後はいつも通りに話ながらそのまま周辺を散歩をし、そして家に帰った。
到着すると私を降ろし、兄ちゃんはバイクを整備に出すからと再び出掛けて行った。
私は部屋に戻り今日の事を考えていた……。
「兄ちゃんが私と一緒にか……」
ベットに寝転び遊歩道での兄ちゃんの台詞を思い浮かべていた。
一体兄ちゃんは何がしたかったのだろう。
もう告白と言っても良いって思える言葉に私は戸惑っていた。
当然だけど妹に直接告白するなんてイカれた事をする筈は無い。
でも自分の時間を大幅に割いてまで一緒に出掛けようなんてもう告白と変わらないんじゃないだろうか?
小説の為に?
そう思いながら何気にスマホを操作しいつもの癖で兄ちゃんの小説を開く。
朝は更新されてなかった小説、さっきまで私と一緒に居たんだから当然まだ更新はされて…………いる。
「え?」
兄ちゃんの小説が更新されていた。
え? 更新時間は2時間前、堤防の上にいた頃だ。
「え? 何で? 兄ちゃんスマホなんて触って無かったよね?」
私は不思議に思いながらも兄ちゃんの小説を開いた。
▽▽▽
告白
今日遂に妹に告白する……。
まあ告白と言っても付き合ってくれと言う告白ではない……それはまだまだ無理だ。
だが! 俺は今日の為に1年を費やした……妹と思い出を作り、妹と距離を縮める為にだ。
本当は18歳まで、自動車免許が取得出来るまで待ちたかった……でもそれだと手遅れになるかも知れない。
高校入学、当然環境が大きく変わる。
妹も大人になる。
妹がもっと魅力的になってしまうのだ。
入学式の時もそうだったが周りも妹の魅力に気付く筈だ。
いや、すでにそんな噂が俺の所に迄届いていた。
だから今しかない……1年掛けた成果を妹に見せる時が来た。
そして告白する……俺と一緒に行かないかと。
オートバイを買って以来毎日練習をした。
妹を安全に乗せる為に俺は何度も何度も練習した。
そう……今日この日の為に。
近くで二輪車講習会が開かれた時はは欠かさず参加した。
時には後部座席に重りを乗せて走ったりもした。
もちろん人を乗せる練習も、公道以外で知り合いに頼んで行った。
そして妹を楽しませる為に色々な場所に行った。
危険はないだろうか? と、出来るだけ確認もした。
俺の妹に絶対怪我はさせられない。
そうして1年掛け俺は完璧とまでは行かないが出来うる準備を全てした。
──まだまだやり残した事はあるけど、そして遂にその日が来てしまった。
俺は今日告白する……そして妹に本当の告白をする為の第一歩を踏み出す。
その告白は……俺と一緒に共に行かないかと言う告白だ、
勿論今日は一緒に旅をしよう、旅行に行こうと言う意味でだ。
……でも……それは俺と一緒に人生を歩まないか?
一生を歩まないかと言う意味でもあるのだ。
その第一歩、それがダメならこの先はあり得ない
俺と妹の可能性を確かめる。
……たかが旅行で断られるなら、俺のその先は俺の人生は……もう……ない。
△△△
「ちょ、待って兄ちゃん重い、重いよ重すぎる」
「あれってそこまでの意味があったの?」
だからあんなに必死だったのか?
その迫力にちょっと引いてしまった。
兄ちゃんのその真剣さ、あの迫力の意味がわからなかったから。
そりゃ1年も準備して挑んだんならあそこまで真剣になるよね。
「もしもあの場で私が行くって言ったら、それは兄ちゃんと一生を共にしますって言う意味だったの? つまりあれってある意味プロポーズって事? えええ? ないわーー兄ちゃん、あれがプロポーズとか……」
小説で意図はわかった。
兄ちゃんの考えている事は大方わかった。
さあどうしよう……一応『考えさせて』と、保留にしたのだが、了承したら一体どういう事になるんだろうか?
私は真剣に考えた。
まずはそう断る!
すると……兄ちゃんショックで寝込む……そして小説エタる。
じゃあOKする、兄ちゃん歓喜で小説続く、でもそれはある意味兄ちゃんとの結婚コースに乗るって事に?
「なにそれどっちも詰んでない?」
「兄ちゃんと一緒に出かけるって言うのは当然やぶさかではない、ないんだけど、一生を共にする気は今の所ないよ?」
うーーん悩む、どうしよう。
高校生になったら色々やりたいって思ってた。
とは言え彼氏を作るとかはあまり気乗りしない。
そこに兄ちゃんからのこの提案はまあある意味願ったり叶ったりなんだけど。
とりあえず完全に断るのは1年費やしたと言っている兄ちゃんが可哀想ではある。
1年もの間私と出掛けたい一心で頑張ったんだから
でもなああああああ……。
いくら考えても答えは出ない……でも行くか行かないかの二択なら。
「そりゃ行くよね……ここで終わりじゃあ小説を読んでる人も私も納得行かない。書いてある事が全部本心だとは限らない。ここで断っても、兄ちゃんが私に小説の通り本気で告って来たとき断っても、どっちも一緒なら……」
そして兄ちゃんの小説を私も作るって考えれば。
そうバイクに二人で乗るのと一緒だ。
兄ちゃんが運転して私がそのナビをする。
……兄ちゃんが小説を書き、私がその協力をするって考えれば。
バイクに乗るのは楽しかった。
兄ちゃんの小説を読むのとても楽しい。
そこに私が居るって実感出来たから……。
ならば私が選ぶ答えは一つしかない
「行こう、兄ちゃんと一緒に!」
私は兄ちゃんと違い一生って覚悟は無いけど、それは本当に全然無いけど。
私はとりあえず当面の間……兄ちゃんのバイクに、そして兄ちゃんの思惑に乗る決心をした。
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