第8話 アイリス視点

「ここまでで良いわ、ここなら誰にも見られてないでしょうし」

「あぁ、また明日」

「......耳を貸しなさい」

「え?」

「待ってるわ、何時までも、あの日助けられてから私はあなたのものよ」


言ってしまった......

ずっとずっと小出しにしてきた感情が爆発して気づけば口走ってしまった。


あの日、アーランに助けられて以来必死に隠そうとしてきた感情が最近抑えられないのだ。

サーシャやシルファ先生がアーランに近づく度、私はこの気持ちを隠し通せなくなっていった。


私がアーランを魔王学園に引き抜いたのだって、私欲が7割のかなり横暴な行いだった。

お父さんは珍しい私のわがままと彼の私を助けた功績を鑑みて手伝ってくれたが、自分でももう少し上手くできたと後悔している。


『大丈夫? 俺が何とかするから逃げて』


彼とのファーストコンタクトは命懸けの盤面だった。


人間国に視察という名の旅行に言っていた時に、本来居るはずのないファイアードラゴンに出会った。

小さな街なら一夜で滅ぼしてしまう存在を目の前に、従者達の言葉も聞こえずその場に座り込んでしまい、死を覚悟した。


そんな時に私とドラゴンの間に割って入ったのがアーランだった。

彼が纏う闇がドラゴンのブレスを防ぎ、私の折れかけた心をギリギリのところでつなぎ止めてくれた。


そして始まったのは私の人生を変えた戦い。


初めて人と共闘した。

隣に立ってお互いを支え合えた。

勝利を共に喜べた。

周りが恐れて近寄らない私に初めての経験をくれた。


彼は私の隣に立てるくらい強くなると常日頃から言っているがもう私なんか比べ物にならないくらい彼は成熟している。

魔法こそ少しお粗末だが、闇魔法は1級品でお父さんにすら一矢報いるくらいならできる程の才能がある。


「素直になれたなら、彼をもっと導いてあげられるのに」


私のこの口が全て悪いのだ。

アーランを前にすると緊張していつも大人たちと接するような仮面を被り、壁を作ってしまう。


もし、もっと素直なら彼は私の望みに応えてくれたのだろうか?

もし、私が彼に臆せず話すことが出来たならもっと彼が成長していたのでは?


全て自分が招いた結果

彼が強くなろうと足掻くように私も素直になるために足掻くのだ。


彼の隣を冷たい魔王の娘ではなく、彼の事が大好きな1人の女が座れるように



「ただいま」

「あ、アイリスぅ……体が痺れて動かないの」

「まあ仕方ないわ、筋肉痛よ、諦めなさい」

「そ、そんなぁ、回復魔法は……」

「無理に回復すると筋肉が元の状態に戻って強化魔法を使う度にその痛みに襲われるわよ、鍛えなさい」

「そ、そんなぁ、ていうかアイリス顔が赤い気がするけど大丈夫?」

「っ! 気にしないで私はシャワーを浴びてくるから寝てなさい」







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ツンデレ魔王女様の勇者育成計画 ヤスミ @minonononon

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