第3話 Aクラス

「早く行くわよ、午後からは授業があるわ」

「え、俺クラスとか聞かされてないんですけど」

「全部私と同じだから大丈夫よ、まあ友達は作っておいて損は無いから積極的に話しかけるといいわ」


 とりあえず、諸々の心配はアイリスに任せれば何とかなりそうだ。

 しかし、友達か

 魔王学園には人間以外の種族が多くいるので異種族と交流がない俺にとっては馴染みが無さすぎるのだ。


「さて、だいたいの説明は終わったしクラスにそろそろ行きましょうか」


 魔王学園の教室は長机で一人一人ですわるというよりは何人かで座って授業を受けるらしい。

 教室に入ると、獣人、エルフ、ドワーフ、魔族、人間、こうみると多様性に富んだいい学校だなと思う。


「お、期待の新人くんじゃん! 私はサーシャ! よろしくね?」

「よ、よろしく」

「あら、サーシャ、友人の私に挨拶する前に私のアーランに声をかけるなんて......」

「ご、ごめんて、新人くんは珍しいからさ? 仕方ないよ」

「まあ、いいわ、アーラン仲良くしてあげてね」

「え、あ、はい、よろしくお願いします」

「うん〜、こちらこそよろしくね〜」


 そう言って挨拶するとサーシャさんはどこかへ走って行ってしまった。

 活発な猫獣人でどこかにミャーっぽさを感じたからか親しみやすさ抜群だ、仲良くしてもらおう。


「じゅ、授業を始めるからみんな席についてー」

「え〜、シルファせんせ〜新入生が来たし遊びましょうよ〜」

「か、カリキュラムがカツカツだから......先に進まないと行けないの......」

「でも、サーシャがどっかに行きましたよ?」

「ふぇぇぇ!! また!? 校長に怒られるぅぅ」


 全体的に授業が始まるというのにガヤガヤしていて、先生はオドオドしているので纏まりがないように感じる。


「なぁ、アイリス授業っていつもこんな感じなのか?」

「ん? あ〜、私はいつも独学で自習してるから授業は聞いてないわよ」

「天才は言うことが違うな、、、じゃあサーシャさんが行きそうな場所は分かるか?」

「あの子はどうせ授業の用意を取りに行くついでに色んなものに目移りして帰ってくるのが遅いだけよ」

「ちょっと探してくるよ」

「あら、行ってらっしゃい気をつけてね」


 せっかく魔王学園に来たのに勉強出来なきゃ意味が無いのでサーシャさんを探して連れ戻そう。

 ロッカーエリアはこっちの方だからこっちに居るといいんだけど、、、

 知らない校舎で土地勘がないので探している俺の方が迷子になりそうだ。

 他のクラスは授業をしているのか人影が少ない。


「あれはサーシャさんか?」


 特徴的な真っ白な毛並みが見えた気がする。

 あとを追うように走ってみるがなかなか追いつけない、足がめちゃくちゃ早いのだ。

 闇魔法で体をの強化してやっと距離が縮まってきた。


「うぅっ、どぉしよ......」

「サーシャさん」

「っ、新人くん......ど、どうしたの」

「泣いてるんですか?」

「な、なんでもないよ、ちょっと悲しいことがあっただけ」

「何かあったなら言ってください、俺は新入生で人との繋がりがないですから、他の人に言ったりしませんよ」

「......」


 サーシャさんは下を向いて黙り込んでしまった。

 悩んでいるということはどこかで誰かに打ち明けたいという思いがあるのだろう。

 初対面の印象からガラリと変わって活発な少女などはそこにおらず、儚げな今にも消えてしまいそうな弱った猫獣人の女の子がいた。


「授業サボりましょうか、今日は帰るまで付き合いますよ」

「......」


 サーシャさんが喋ってくれるまで気長に待っていることしか出来ない。

 シルファ先生には申し訳ないことをしたな、また後日謝りに行こう。

 今はこの今にもどこかへ飛んでいきそうな少女の笑顔を取り戻す方が大切だ。



 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 次回、サーシャの悩み


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