第4話 モニタリング(会議)

 明日は、モニタリングがある。施設長や、担当支援員さんが、居宅サービス責任者の中年の素敵な女性と、話(会議)が、できるのを、楽しみにしていた。

 一応、工賃が上がっているので、間違っても、変なことは起こらないだろうと考えていた。

 薬を飲んで、就眠すると、気が付いたら、朝になっていた。


 守は、時間をかけて、身なりを整え、モニタリングを迎えることになった。

 朝、守が、事業所に来ると、時間があったので、用意していた、言葉を教えることにした。守は、コトゲに、言った。

 「『スミマセン、言い過ぎました』と言って……」

 すると、コトゲは、素直に復唱した。

 「もう一回」「もう一回」と言うと、コトゲは、何度も復唱した。

 取り合えず、ミッション終了だ。

 守は、万感の思いで、モニタリングを迎えた。


 モニタリングの時間になり、支援員に呼ばれた。

 「2階へ」

 そう支援員が言うので、急いで駆け上がると、そこに、上司Aがいた。

 守は、「何故、いるんですか?」と聞くと、「私は、此処の上司だから」だという……。

 守は、(見ているだけなら、いいけれど……)と、思って、席に座った。


 施設長が、テーブルを、囲んでいる3人に、守の直近の様子を、一通り話した。すると、上司Aは、守のマウントを取って、罵詈雑言を浴びせ始めた。

 「貴方、約束、守らないのはどうして? あなた言ったよね「守ります」って、何で、ですか?」

 守は、混乱してきた。

……何で、上司Aが、ここで、話しているんだ……私は、此処で、一生懸命働いて、  工賃に、ボーナスが付くほど、貢献した人間では、なかったのか? ……なんで、過去の話し、向こうでの話が、ここに、出てくるんだ……

 上司Aは、守に対する憎しみを、露わにして、一体、何をしたいのか? 守には、わからなかった。

……ここを、辞めて、貰いたいと、思っているのか? ……

 このはけ口を、どこに、求めたらいいのか? 分からず、守は、呆然となりながら、残りの時間、作業をした。


 作業中、コトゲに「支援員のいうこと聞かなくちゃ、いけないから、勉強は暫くできないんだ」

 「僕、勉強したい……」

 その、コトゲの精一杯の抵抗が、胸の奥の心に刺さった。


 帰り際、ここの施設長さんがいたので、その話をした。

 施設長さんは、話が分かる人だった。

 上司Aのことも、「強い思いが、あって、そんな感じがする」と言って、守をなだめた。

 「明日、休みます」

 「うん、いいよ」

 そういって、散々な一日を終えた。



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