第3話 アドバイス

 次の日、守は、コトゲと、事業所で一緒になった。

 早速、守は、コトゲに、話を切り出す、切掛けである、話の掴みについて、教えることにした。

 「コトゲさん、話を聞いてもらうには、『お話してもいいですか?』って、断って、聞くと良いですよ」

 「はい」

 「じゃあ、言ってみて」

 けれど、守の望んだ言い方を、コトゲはしてくれなかった。

 そこで、「もう一回」 、「ダメ、もう一回」、「もう一回」、「もう一回」と、言って見たが、それは、上手くいかなかった。


 守は、それ以上、コトゲに関わらず、イナズマの皆の上に立ちたがる、様子を見ていた。イナズマは、守と、コトゲのやり取りを見ていて、いつの間にか、その話し方を、借用して、今までより、マイルドな、感じで、相手を、見つけて、自己主張をするようになった 。


 お昼になると、守は、今までの方針を変えて、コトゲに、手本を示すことにした。

 「コトゲさん、お話してもいいですか?」

 すると、コトゲは、守が期待したことを、言わなかった。

 守の欲しかった、言葉は、「はい」なのだが、それは取り合えず、覚えてもらう事を、優先にして、それを、後で、修正しようと考えていた。


 守は、「はい」と、コトゲが言うべき、言葉を言って、話始めた。

 「『業種子』といって、ごう、技、欲望は、必ず結果となって、出てくる。善因善果、悪因悪果、自因自果でも、善因を積めば、それが生じる可能性は高まるが、人が運ぶ縁がないと、果を得ることが出来ないという、コトゲが、今まで善因を積んできた、その果が、私の縁によって、より良い方向に向かっていると思えないか?」

 それでも、コトゲは、何も言わなかった。


 午後の作業は、草取りだ、コトゲは、別の作業場に行っていた。やがて、作業を終えて、掃除当番を終えると、コトゲがいた。そこで、守は、コトゲに言った。

「お話していいですか?」

 すると、コトゲは、守に、「お話しても、いいですか?」と、復唱した。

 守は、笑顔で、事業所を後にした。


 守の体感だが、情報を発信すると、人が集まってくる感じがする。

 そこで、もう一本、コトゲに、お話をすることにした。

 それは、次の日のお昼のことだった。

 「お話してもいいですか?」

 「お話してもいいですか?」

 コトゲは復唱して、守をじっと見た。


 守は、コトゲに、「はい」と言って、話し始めた。

 「私は、計画を立てて、行動しているわけではない、確かに、大きな目標として、誰かを支える人になって、仲間たちと彼女と共に、心安らかに暮らすことが、目的としてある」


 コトゲは、それでも、何も言わなかった。

 守は、話を続けた。

 「けれど、実際は、目の前にある仕事を片付けるために、必死に仕事をこなす、一日でできることは、限られている。そんなに、作業を、詰め込めないんだ」

 「……」

 このやり方だと、目の前しか、見てないから、目標から逸脱する可能性がある。そこで、1かっ月とか、2週間置きに、期限をきめて、タスクを、選択しているんだ。」

コトゲは、一言「凄いね」と言って、黙り込んだ。


 守は、その働きかけが、ナチュラルでないことは、知っている。では、どうすればいいのか? それが、守には、分からなかった。 取り合えず、覚えてもらいたい言葉が、後、2、3個あるので、守は、順次教えていくことにした。


 次の言葉が「どういうこと、ですか?」だった。

 お話の中では、曖昧な言葉が沢山でてくる、相手の話を、理解するには、自他の理解が、必要で、その為に疑問を、投げかける事で、お話の曖昧さを減らして、相手の話を理解する必要があると、そういった言葉が、いると思ったからだ。

試しに、守が、コトゲに言うと、

今度は、すんなり「どうゆうこと、ですか?」と、復唱した。

 守は、にっこり笑って、彼の努力を、称賛した。

 「へへっ」

 コトゲは,守の言葉が、嬉しくて、ニッコリ笑った。

 



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