第22話「託された想い」
「アルシア。君が大龍脈をバニシング・フィールド……いや、神殺しの力で一部を破壊してくれたおかげで、彼の復活までの時間を更に延ばす事が出来た。」
「………………いて!?」
「アンタは「ほら、良かったじゃん?」みたいな顔しない!シギュンも甘やかさないの!」
いきなりニーザに怒られたシギュンが苦笑しながら「甘やかした、とかじゃないんだけどね……。」と呟く。
「まあ、ともかく……。これによって悪神の計画は更に狂った。それも致命的に。自身は相変わらず動けないまま。挙げ句の果てに神殺しなどという、神にとってはこれ以上ないほどの猛毒が撃ち込まれた。ロキの遺体は所在不明だし、手元に残ったのはスルトの劣化した神核のみ。彼は君達が大龍脈を完全に修復するまでの間、更に身を削りながら待つ事しか出来なくなった。」
「それでも、その悪神は生き残ったんだね?」
「残念ながらね。ギリギリ持ち堪えた。とは言え、彼はもう自身で動く程の力を殆ど持っていない。強化魔族、暴走魔族を作り出してニーザ達を撹乱し、2つの災厄……、尖兵を生み出した。スルトの記憶から、自身の命の一部を核としてマグジール・ブレントを複製死体として作り出し、スルトの神核をベースに、遺体格納も兼ねて鎧の魔族を作り出した。」
それだけ話して「あとは君達が知ってる通りだね。」とシギュンは微笑む。
俺は口を開く。最後の答え合わせだ。
「悪神は……ロキの遺体、スルトの神核を依り代に復活する。その認識で間違いないな?」
シギュンは静かに頷く。
それを見たフリードは青褪めたが、シギュンは安心させるように微笑んだ。
「たしかに、途方もない程強いよ。けれど、永い時を経て神力がスカスカの遺体と、殆どの力を失った神核を使って復活する事を考えると、今が一番弱い状態だ。倒すには、今を置いて他にない。それに……、ここにはボクが最も信頼する高位魔族が3人と………、友人であるアルシア、フェンリルの弟子のアリスちゃん。神を討滅する事が出来る人間の子が2人いる。不可能じゃない。いや、必ず倒せるとボクは確信しているよ。」
シギュンの穏やかだが力強い眼差しが俺達に向けられる。
俺達は頷いた。
スルトもロキも、命を賭けてここまで繋いでくれた。ここまで信頼されていて……、出来ないなどと口が裂けても言う訳にはいかない。
俺やフェンリル達はともかく、アリスも不満や不安など無いと強く頷いている。
それを見てシギュンは笑った。
「なら、決まりだね。アルシア達は申し訳ないけど、後で個別にボクの所に来てくれないかな?場所は………、フリード君、どこか借りれる?」
「個室とかでもいいかい?」
「助かるよ、ありがとう。案内してくれるかな?」
そう言って、シギュンはフリードに連れられ部屋を出ていったのだった。
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