第4章「その名である意味」

第19話「少女の名は……」

天蓋の大樹から戻った数日後。

俺とフェンリル達は探知魔法で手分けしてファルゼア大陸を探っていた。

探している対象は当然、ロキの遺体を持ち去った鎧の魔族である。


俺は投写した地図越しに精密探知をかけながら、同じ作業をしているフェンリル達に声をかける。


「そっちはどうだ?」

「………駄目です。ファルゼア城やその近域、ルーリア渓谷には何も。」

「妾も駄目じゃな。グレイブヤードも含めてくまなく探ったが、あやつの反応は全くと言っていい程引っ掛からん。」

「こっちも同じね。鎧の魔族のよの字も引っ掛からない。」

「………こちらもだ。天の瞳、風を駆使しても見付からない。前回もそうだが、隠蔽能力はやはり相当な物だ。」


それを聞いて溜め息を吐く。

物探しの得意なフレスが言うのだから、最早向こうから出てくるまで待つしかないのが現状だ。


だが、俺達はそれでも根気よく探知魔法で探索を再開する。

ファルゼア城に戻ってから、俺達はある仮説を立てた。

それがもし正しかった場合………、次に鎧の魔族が現れれば、その時点で全てが手遅れになる可能性が高い。


俺達が鬼気迫る勢いで探知を続ける中、遠慮がちにフリードが口を開く。


「アルシア、みんな。取り込み中申し訳ないのだけど、君達にお客さんが来たらしいんだ。」

「…………相手は?」

「前に話に出てきた、シギュンという女の子らしい。」


それを聞いて、フェンリル達に視線を向けると、全員が頷いた。


「連れてきて貰えるように頼めるか?」

「大丈夫だよ、少し待っててくれ。」


フリードがそう言ってから部屋の前で待機している兵士に指示を出して数分後、俺達がいる部屋にあのシギュンと呼ばれた少女が現れた。

その姿を見て、アリスは嬉しそうに……

フェンリルとフレスは驚いた顔を……

俺とニーザは嬉しくも複雑な顔を向ける。


「やあ。久しぶりだね、3人とも。」

「シギュンさん、あの時はありがとうございました!」

「…………………っ。」

「………お主は、」


「アリスちゃんは……、また強くなったみたいだね。それと………、2000年ぶりだね、2人とも。」


アリスに屈託ない笑いを返した後、シギュンは懐かしむ様な微笑みを浮かべて、未だに驚いたままのフェンリル達を見る。

2人が色々な感情が渦巻いて何も言えなくなってる中、俺は口を開いた。


「……………どういう事なんだ、。」

「「……………………え。」」


俺が口にした名を聞いて、フリードとアリスは固まった。

シギュン………、ロキは2人を見たあと、微笑みながらその小さな人差し指を口元に当てて「しー。」と囁いた。


「そう呼びたいのは分かるし、ボクも嬉しいけれど、今はシギュンと呼んでくれないかな?この王都には君が結界を貼ってるみたいだけど、下手をすればに気付かれる。」


「彼………?」とアリスが呟く様に聞くと、シギュンはその問いに満足そうに頷いた。


「そう。2000年前から暗躍していた、にね。」

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