第16話「堕天」
マグジールが向かってくるのと同時に、彼が纏っていた影は周囲に展開され、そこから無数の礫が俺目掛けて射出される。
俺は避ける事はせず、魔眼を起動して空中に展開した魔法陣とリンクさせた。
砲門となる魔法陣の数は50、マグジールが放った礫の数はざっと見、6倍の300程度はあるだろうが、問題ない。
砲門の数はニーザに遥かに劣るが、そこは連射力でカバーすればいい。
「………
俺が短くそう告げると、装填された黒い炎閃が、マグジールの放ったフレア・レインやライトニング・フォール以上の弾幕となって影の礫を破壊し尽くし、マグジールを襲う。
が、マグジールはそれでも止まらない。
破壊されるのも構わず影の礫を立て続けに連射し、マグジール本人は脚に
「ぜあぁぁああああっ!!」
剣に黒い影を凝縮させ斬り掛かってくるが、地嶽炎刃で真っ黒な炎を纏った岩の剣を生み出してそれを受け止め、その影を殺す。
「それがお前の力か、アルシア!」
「ああ。神さえも殺す禁忌の力だ!」
振り下ろされた剣を弾き飛ばして地嶽炎刃を至近距離で発動するが、マグジールはまともに受ける前に後退し、後方に展開していた影を引っ込めて、今度はそれを地面に展開した。
地面に広がった影からは魔族が現れて、どんどんとその数を増やしていく。
先程から何度かマグジールの影を殺しているが、尽きる事は無いというかの如く、消した端からその影が広がる。
マグジールが口を開いた。
「卑怯と笑うか?」
「いや?アーティファクト三つも持ち歩いてこんな力をいくつも使ってるんだ。そんな事口が裂けても言えねえよ。」
影から生まれた無数の魔族が俺目掛けて押し寄せてくる。
そのどれもが超級、特級クラスの魔族だ。
ドラゴン、アークリッチー、ベヒモス、スカルトロールなどもいる。
トロールの持つハルバート、アークリッチーの放つ死の呪文、ベヒモス、ドラゴンの放つブレスの全てを避けつつ上空に飛び、マグジール含めた全ての敵に照準を合わせ、ニーズヘッグの力をまた一つ展開する。
(頼むぞ、ニーザ……。)
展開された魔法陣に次々と重力球が装填され、それを見たマグジールが緊迫した表情に包まれる。
ヴェルンドの村で大人のニーザが使った物よりも数は少ないが、アレと同じものだからだ。
「結界……、展開!!」
マグジールが即座に影の防壁と結界を展開し、眷属である魔族に攻撃指示を飛ばしているが、構わず俺はそのまま装填した魔法を起動した。
「
無数の重力の暴威が地上に降り注ぐ。
死を悟った魔族の群れの全てが次々と撃ち出される重力球の波に攻撃を撃ち込むが、それは攻撃をした魔族と共に呑まれて掻き消えていく。
最後に残ったマグジールが更に魔族を生み出して展開していくが、神殺しを纏った無慈悲な力の波はそれらを容易く打ち砕き、マグジールに迫った。
「ああぁぁぁああああ!!!」
マグジールは雄叫びを上げ、ディバイン・ブレードの収束された闇をぶつける。だが、俺の破壊の力の前では無力でしかなく、それは衝突した先から削り砕かれていった。
だが、マグジールは諦めることはなく、砕かれた端からディバイン・ブレードを展開していき、次々とぶつける。
数分の間、降り注ぐ堕天をギリギリで受け切り、マグジールは結界魔法をいくつか生み出して足場とし、俺に迫る。
俺もバフォロスを抜き放って急降下しながら斬り掛かった。
「はあぁぁぁああ!!」
お互いに武器をぶつけ合って斬り結ぶ。
マグジールの片腕と、俺の魔力で編まれた翼が斬り裂かれたのは同時だった。
マグジールは腕を、俺は翼を治してまた斬り結ぶ。
バフォロスを乱暴にぶつける様に叩きつけるが、マグジールはそれらを全て捌いて、至近距離からディバイン・ブレードを撃とうとするが、それを鎖で縛り上げ思いっきり振り回した。
「……らぁっ!!」
マグジールを地上目掛けて投げ飛ばし、術を2つ起動する。
1つ目はあらかじめ用意していたものを。
2つ目はニーズヘッグの召喚を使った時から準備し、ついさっき準備を終えた物だ。
俺はバフォロスをしまって魔力を右手に集めて上空に構えた。
「
辺りが暗い雲に包まれ、俺の頭上に巨大な赤黒い雷の魔力球が出来上がる。
それを見たマグジールは再び影とディバイン・ブレードを展開した。だが、影は先程のように護りに展開するのではなく、その全てを剣に注ぎ込み収束させた。
正真正銘、最後の一撃らしい。
「「終わりだ!!」」
俺の放った魔法と、マグジールの構えた技が放たれたのは同時だった。
地上の全てを消し去らんが如く、赤黒い雷が地上に落ち、抉り………、空に広がる闇を打ち砕かんと、影の刃がそれに喰らいつく。
お互いがお互いを破壊しあい、影の奔流が俺の放った塵禍降雷を呑み込み迫りくる。
「………っ、くそ………っ!」
再び魔法を起動し、2発目を撃ち込むも、影の奔流は止まる事は無い。
ディバイン・ブレードは破壊の雷ごと、俺を呑み、空へと消えていった。
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