第三部・第1章「黒き鎧」
第1話「2つの反応・前編」
ヴェルンドの村から戻って数日後。
アリスとフェンリルを除いて、俺達はフリードの私室に来ていた。
いつもの会話なら別にいいが、今回は内容が内容なので他人に聞かれたくないと申し出たところ、フリードの私室に招かれたのだ。
「アルシア、ニーザ。今回の遠征、お疲れ様………なんだけど、二人共、大丈夫かい?」
「………気にするな。というか、気にしないでやってくれ。」
そう言って、ほんの少しだけニーザを見る。
昨日、元の姿(?)に戻ったニーザはフレスの横で真っ赤になって俺から目を逸らしている。
大人になった時の姿の事は覚えているので恥ずかしくて仕方ないのだろう。
本人の名誉の為にも、言わない方がいい。というか言ったら城が吹き飛びかねない。
フリードも察してくれたのか、これ以上は言わないでくれるみたいだ。
「分かった。まあ、無事そうで良かったよ。リアドール君は大丈夫なのかい?」
「そっちも問題ない。初実戦での神術のフル稼働……、いわば過労状態だ。3日もすれば治る見込みだよ。」
そう言うと、フリードは安心した様に微笑んだ。
アリスは王都に帰ってきてすぐに体調を崩し、現在はフェンリルに付き添われて医務室で療養中だ。
複数のアーティファクトと神術、それらを初実戦でフルに使ったのだ。そうなるのも無理はない。
「それよりも……」
「分かってる。敵の情報だよね。フェンリル達はいいのかい?」
「問題ない。帰りの道中に伝えてる。まあ、嬉しくない話なんだがな……。」
この場で知らないのはフリードと待機していたフレスだけだ。
俺はニーザに目を向けると、ニーザは無言で頷いたので、俺は口を開く。
「敵が使った能力、今までの強化魔族の数、今回は暴走魔族も現れた事から考えて……、裏には神がいる可能性が高い。」
「神……………、」
「やはりか……。」
出てきた単語を聞き、フリードは呆然とした表情を浮かべ、フレスは予想していたらしく、静かに頷いた。
「本当、なのかい……?」
「ああ。この大陸全土だけで見ても、あの規模の強化魔族を用意するなんて人間には出来ない。高位魔族クラスでも不可能だ。」
高位魔族は居城であるグレイブヤードにいれば本来の力を発揮できる。
だが、その本来の力を持ってしても大陸全土に強化魔族を発生させる事は出来ない。
もう一つのヒントはマグジール。奴が纏っていた力だ。
「あの場所にマグジールがいた。奴は……
「………かむ、い?」
「ああ。神が使う技……、と云うより、神であれば自然と纏っている力で、端的に言えば神術でなければこちらの攻撃は通らない。如何なる方法を以てしても、人間が纏う事は不可能だ。」
「私達、高位魔族もな。」
フレスが補足し、ニーザも頷く。
彼らも確かに神の血を引いた強大な存在だが、その彼らを以てしても、神衣を纏う事は出来ない。
アレは純粋種の神族のみが纏う事が出来る代物なのだから。
「……つまり、神である何者かが、マグジールにそれを纏わせた、と?」
「その可能性が高い。」
濁して伝えたところで仕方ないので、簡潔に伝えると、フリードは難しい顔をして黙りこくってしまった。
この時代に於いても、神がどれだけ強大な存在か、しっかりと伝わってるようだ。
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