第2話「2つの反応・後編」
「……一つ、訪ねていいかい?」
「何だ?」
聞き返しはしたものの、正直に言えば、フリードの聞きたいことはその不安そうな表情から見れば何となく察しはつく。
「……勝てるのかい?」
「無理だ。戦場をグレイブヤードに変えて、ニーザ達が本来の力で戦えたところで、束になっても神には勝てないよ。」
「……そこまで。」
残念ながら神に勝つのは不可能だ。
神とは言ってしまえば、一柱一柱が概念そのものと言っていい程の存在だし、その強さは下界に住む者では到底及ばない。
一度、出力だけは本気のロキと手合わせした事があったが話にならないレベルの惨敗だった。
この話の裏にある神がどれ程の相手かは分からないが、少なくともここにいる全員より強いのだけは確かだ。だが………。
「ただ、今回裏にいるのが神族だったとして、気になる点がある。」
「気になる……?」
「ああ。さっきも言ったが、神は俺達よりも遥かに強い。それこそ、俺達と直接戦うなんて真似をせず、大陸ごと吹き飛ばして決着と出来るくらいにな。」
「…………。」
「だが、それにしてはやってる事がショボすぎる。疑いだせばキリが無いが、神クラスなら暴走魔族や強化魔族よりも強い魔族を作り出して攻め込ませる事だって出来るはず。それをしないのは……」
「出来ないから、ね。ヴェルンドでの戦いで分かったわ。マグジールをわざわざ蘇らせて神衣を纏わせて戦わせるくらいなら、それより他にもっと使える奴らを呼んだほうが早いもの。」
ここに来て、ニーザがはじめて口を開いたので、同意するように頷く。
楽観視かもしれないが、それをするだけの力が無いと見ていい。
「もし、そうなら勝ち目は?」
「それは………」
そう言いかけた時に、フレスとニーザが何かに気付いたかの様にそれぞれ別の方向を向いた。
彼女達の反応を見るに、恐らくは……
俺が感知魔法で気配を探ろうとしたところで、今度は部屋に置いてある通信用魔道具が起動した。
相手はノーデンだ。
『陛下、皆様。ウェストブールの街とサウスウェーブ要塞が襲撃を受けたと報せが入りました。』
「詳細は?」
『ウェストブールの街に大量の強化魔族が侵攻中。こちらは現在、冒険者と駐在軍が防衛にあたっている模様。被害は軽微です。』
「サウスウェーブ要塞は?」
『……恐らくは、全滅かと。襲撃の連絡を最後に、向こうからの連絡は途絶えております。』
「全滅!?襲撃の報告を受けてそう経っていないだろう?!」
フレス達が魔族を感知してから、時間は経っていない。判断するには早すぎるが全滅は想定した方がいいだろう。
俺はソファーから立ち上がって、移動する準備を始める。
「フレス、ニーザ。2人はウェストブールへ向かってくれ。俺はサウスウェーブに向かう。」
「アルシア。だけど………」
「ウェストブールは今から行けば間に合う。お前達2人が行けば、被害は最小限に留められるはずだ。サウスウェーブは………恐らく手遅れだが、放置して王都に攻め込ませる訳にはいかない。」
「……分かった。アルシア、フェンリルには待機するように言っておくが、それでいいか?」
「ああ。すまんが、先に行くぞ。」
フレスにそれだけ頼んで、俺は先に部屋を出る。
「まあ、間違いなく当たりは俺だろうな……。」
城の長い廊下を歩きながらひとりごちる。
感知魔法で探った気配……、
アレは間違いなく高位魔族と同等の気配だった。
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