第50話「準備完了」
「アリスが来るなら問題ないか………。フェンリル、ニーザ、そっちはどうだ!!」
俺はラヴァ・スライムの相手をしながら、眼下の2人に声を掛ける。2人とも問題ないと頷いてくれた。
「アリスが来るタイミングには合わせられる。ニーザも力を貸してくれるからの。」
「私はフェンリルとアリスの手伝いだけだから問題ないわ。問題はトドメをどうするかだけど。」
アリスから念話が来る少し前、実はちょっとした問題が起きた。
急にラヴァ・スライムの力が膨れ上がったのだ。
初めから仕込んでいたのか、それともマグジールの端末体に何か仕込まれていたのか、それは定かではないが、いずれにせよ更に強くなった事には変わりない。
結局、予定が狂いトドメを担当するはずのニーザがフェンリルのサポートに回っている。
トドメなら何とかなるか……と、声を上げようとした時だった。
『トドメは私に任せてもらっていいですか?何とかなり……いえ、してみせます。』
移動中のアリスから声が掛かった。
『アリス、いけるのか?』
『はい!』
フェンリルがそれを出来るのかと問いかけ、アリスはそれに躊躇いなく即答した。
俺はフェンリルの方を見て確信した。アリスなら大丈夫かと。
何せ、短い付き合いとはいえ、アリスと殆ど一緒にいるフェンリルがそれならば問題ない、と笑っているのだから。
『ならばよい。アルシアよ。そいつをまだ抑え込んでおれ。』
「言われるまでもねえよ。」
そう言って俺は、目の前のラヴァ・スライムと殆ど同じ大きさのゴーレムを動かす。
アダムの書にあったプリトヴィーの力で生み出した物だ。
大地に干渉して操作する術だが、オリジナルには当たり前だが遠く及ばないし、何より、この規模のゴーレムを作り出すのにも動かすにも凄まじい勢いで魔力を食われる。
俺はバフォロスで魔力を奪いながら迫りくるラヴァ・スライムをゴーレムで迎撃していく。
凍らせたスライムをコイツで倒せばいいのでは?となるが、超級、特級のスライム種はそうはいかない。
魔族にも人間でいうところの心臓があり、その位置も大体胸だったり頭部だったりするのだが、スライムの場合はそれがその身体全てが心臓にあたる。
そうなるとこれほど厄介な魔族もいない。万が一が起きない為にも、一撃で完全に破壊しきらなければならないのだ。
このラヴァ・スライムも先程から龍脈にも接続して強くなり、更に巨大化している。
俺の作れるゴーレムの規模では、足止めは出来ても、こいつを倒せるだけの火力は出せない。
「オオオオオオオオオオオオ!!」
「やらせねえよ。」
ラヴァ・スライムが咆哮を上げながらフェンリル達に迫るのを、ゴーレムで殴りつけて止める。
そろそろアリスが来るか……、そう思った時、アリスからの連絡が入った。
『フェンリルさん、ニーザちゃん、いけます!』
『分かった。合わせろよ、アリス、ニーザ!』
『誰に言ってるのよ?ブーストを掛けるゲートを作る。あとは貴女達のタイミング次第よ。』
3人が念話で準備を始めたのが分かったので、俺はゴーレムをラヴァ・スライムに抱き着かせて動きを止め、ゴーレムの肩から飛び立つ。
「熱い身体に岩のゴーレムからハグのプレゼントだ。少しの間、楽しんでろよ。」
俺がそう言ってその場から離れると同時に、入れ替わるようにカタパルトで射出されたアリスがラヴァ・スライムの真上に辿り着いた。
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