第43話「巨大スライム」
俺達やあまりの強さに呆然としている冒険者やドワーフ達が見守る中、戦いは決着が付いたとばかりに錫杖を消してニーザは無数の重力球が落ちた地点を満足そうに見ていた。
「……都合99回ね。」
「ん?」
「あと1回で、彼の蘇生は使えなくなるわ。この場で殺す方が楽だけど、その前に聞くこと聞かなくちゃ。」
重力球の破壊跡から、再び蘇生されたマグジールが姿を現す。が、その姿には先程まで僅かながらにあった余裕は無くなっていた。
端末とはいえ、彼の蘇生はもうあと一回だけ。
ニーザの手にかかれば、容易い事だと理解しているからだろう。
「さて、じゃあ教えてもらおうかしら?貴方の裏にいる者について。」
「……答えると思うか?」
「言わないならそれでいいわ。この場で端末でしかない貴方の息の根を止めればいい。それに……」
ニーザはそこで区切り、マグジールの身体を覆う黒い力を見てから再度口を開いた。
「凡その敵の形は見えたのだもの。あとは本体の貴方か、いるのであれば貴方のお仲間に聞けばいいわ。」
「ちっ………………。」
マグジールは舌打ちをした。
ニーザの言う通り、凡その敵の形は見えた。それが誰なのか、また……何故この世界でそんな真似をするのかまでは分からないが、今得られる情報としては充分だ。
薄々感じていた可能性が当たったのだけは、残念でしかないが。
ニーザは空中の魔法陣を消して、自分の掌で直接術を組み始めた。
血の様に赤いその眼を金色に変えながら。
「今度は魔法ではなく、私自身の力でトドメを刺してあげる。神の力だろうと関係ない。跡形も無く消えなさい。」
「くそっ……………!」
村で見せたよりも小さいが、それよりも高圧縮された赤黒い雷の球をニーザはマグジール目掛けて放とうとする。
その言葉も先程よりも昏く、冷酷な物だった。
「……認めよう、僕の負けだ。だが、道連れにはさせてもらう……!」
どう転んでも勝てないと悟ったのだろう。
マグジールは胸に手を当て、魔法陣を起動させた。
術式からして魔族を召喚するタイプだ。
ニーザがそれを破壊しようとするも、何らかの干渉……、恐らくは黒幕の介入により、それは出来なかった。
そしてその召喚先も、此処ではあるが術式はマグジールを生贄にして出てくるタイプの物だ。
マグジールの身体を溶岩の性質を持ったゲル状の物体が覆っていく。
「ラヴァ・スライムか……。」
それも等級的には特級……、気配の感じからして暴走魔族らしい。
スライムはこの世界においては色々な意味で有名な魔族だ。
よく、スライムは下級の最弱モンスターとして名が上がるが、それは駆け出しの冒険者や戦わない一般人が軽く話を聞いただけで広げたデマカセの様な物だ。
下級に於いてはその認識で正しいが、スライムは全ての等級に存在する魔族で当然、等級が上がればそれだけ強くなる。そして……
「やっぱりバカでかいな。」
「そうじゃな。しかも暴走魔族というのが質が悪い。」
スライムは等級に応じてデカくなる。特級クラスにもなると、その大きさは城や山レベルには大きくなる。
デカくて強いを体現する、そういうシンプルさでもスライムは有名なのだ。
……戦闘狂以外は誰も喜ばないが。
そして、特級クラスのスライムにはもう一つ厄介な特性がある。
それは周囲にある物を取り込み、自身の力に変えてしまうという、非常にやっかいな物だ。
これは取り込んだ物の能力も自分の物としてしまう性質も持ち合わせている。
召喚された暴走状態のラヴァ・スライムは今も溶岩や岩石、アリス達が倒した魔族を取り込んで強くなっていく。
………当然、そこには自身を呼び出したマグジールも含まれている。
その様を見て、冒険者やドワーフ達は改めて唖然とし、俺とフェンリルは心底面倒くさいという顔でラヴァゴーレムを見た。
「マグジールめ。厄介な物を残しおって……。」
「ああ。神衣を纏った特級スライムなんて、倒すのがすげー面倒くせぇぞ。」
「オオオオオオオオオオオオ!」
神の力を纏ったラヴァ・スライムは、まるで俺達に挑む意思を見せるかのように、大きな咆哮をあげたのだった。
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