第41話「神衣・マグジール」
先に動いたのはニーザだった。
ニーザは空に浮かび上がった魔法陣ではなく、自分の周りに新たに魔法陣を10展開して5属性の魔法をそこから弾丸の如く連射していく。
マグジールは……避けない。
まるでその必要も無いと言わんがばかりに飛来する魔法の雨をその身で受け止めた。
無数の魔法がマグジールの身体に叩き込まれ、その姿が炸裂する魔法によって見えなくなっていく。
「………ふふふ。」
魔法が着弾し、ぶつかり合って爆発する地点を見て、ニーザは愉快そうに笑い、しゃらり、と音を立てて錫杖を構えた。
次の瞬間、爆炎の中から無傷のマグジールが剣を両手で構えて斬り掛かってくる。
「おおおおおおおおっ!!」
ニーザは読んでいたとばかりにその一撃を錫杖で受け止め、その長い尾でマグジールを殴り倒さんとするが、マグジールは深くは追わず、そのまま後退し、ニーザはそれを追うように魔法を再びいくつか放った。が、やはりそれはマグジールに当たりはするものの、効くことは無かった。
「魔法が……通じない?」
ニーザが放った一発一発の魔法は一般の魔導師が放つ上級魔法と同等の威力だった。
それをまったくの無傷で受け止めたのを見て、アリスの顔が強張る。
「そうだ。この身体に魔法は通じない。邪悪竜ニーズヘッグ。如何にお前が最強の魔族であり、強大な存在であろうと……この僕の前には何の意味も無いと知れ!」
マグジールはそれがまるで自分の力だと言わんばかりに叫ぶが、俺達は心の中でこっそり「だからどうした……」と呆れる。
奴の纏っている力はたしかに強力だ。
たとえどんな魔導師であっても、あれを手に入れるのはほぼ100%不可能だろう。
だが、あくまで効かないのは魔法だけであり、神術は通る。
少なくとも、ここにいる全員、神術は使えるのだ。まあ、俺だけは攻撃オプションが少ないのは事実だけれど……。
そう考えると、この場合……一番の奴の天敵は意外とアリスかもしれない。
彼女は神術がしっかり使えるし、通じないなら通じないで直接ぶん殴りに行くからな……。
「何がおかしい!!」
俺達があまり驚かなかったからか、それとも気付かずに笑ってでもいたのか、マグジールが声を荒げた。
「そんな物は意味が無い。」そう言おうと口を開きかけるが、それを遮るように、くすくすとニーザが笑う。
緩く、そして妖しく。
「いいえ?貴方が私の魔法をこの程度で封じた気でいるのが面白くて、つい。」
「事実、そうだろう。貴様の力は僕のこの力の前では何の………!」
「それ♪」
ニーザは風の魔法で巨大な熱風の塊一つ作り出し、それをマグジールに投げ付けた。
「ふん……無駄だと言うのが分から………!?」
ニーザの放った魔法は、今度はマグジールの纏う力に干渉される事無く、しっかりとその身体に直撃し、地面を抉りながら吹き飛ばした。
「今度は通って……あ、そっか。」
アリスはマグジールが吹っ飛ばされた光景を見て一瞬、不思議そうにしていたが、その原因が分かってすぐに一人納得した。
対して、マグジールは訳が分からないとばかりに混乱していた。
「ば、馬鹿な…、魔法は僕には効かないはず……」
「私の事を舐め過ぎよ、マグジール。現魔王の一人である私に借り物の力と、その程度の認識で挑んだ愚かさ、その身を持って知りなさい。」
ニーザはその大きな黒い翼をバサリと広げ、空に展開した魔法陣から魔法を豪雨の様に降らせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます