第25話「封印の真実・前編」

「あー、その……何だ。その話はまた今度に……。」

「アルシア。さっきどんな事でも話してくれるって言ってたよね?」


その言葉に俺は「うっ。」と声を詰まらせる。

顔は笑っているが目が「お前が言い出した事だろう」と訴えてきているので、観念するしかないだろう。


「実は………」

「此奴がバニシングフィールド…………、アークリッチーの火球を消し去る際に使った魔装具でルーリア平原を今の渓谷にしたせいじゃ。そうだろう、アルシア?」

「……フェンリル。」

「平原を………、まさか、伝承にあった平原を渓谷に変えたって、本当に君の仕業なのかい!?」

「あー…いや……。」


言い淀んでいたら、今度は後ろでニーザが大笑いした。

アイツまで口を開いたらもう終わりだろう。


「人間達の伝承ではアルシアはどう語られているのかしら?」

「ニーズヘッグ様。こちらに学校で使う教科書がございます。」

「ありがとうね。えっと、ディートリヒでいいのよね。どれどれ………ぷっ、キャハハハハハ!!まんまコレ当時のアルシアの姿じゃない!」


ニーザは再び、挿し絵になっている俺を見て大笑いした。




◆◆◆


2000年前のルーリア平原跡




「取り敢えず………もう寝ていい?」

「駄目じゃ。」

「駄目に決まってるでしょ。」

「駄目だ。」


7日に渡る死闘を乗り越え、漸く文字通り死ぬ程寝ることが出来ると思っていたのに、待っていたのは高位魔族3人による却下の言葉だった。


「何でだよ!」

「当たり前でしょ!アンタ、龍脈どころか大龍脈までぶっ飛ばしておいて「疲れたから俺もう寝るねー♪」なんて舐めた話が通る訳ないでしょ!!」

「ぐっ!?」


それを言われては何も言えないと俺は押し黙る。

龍脈は大地の下に流れ、生き物の血管の様にこの星に流れる力の河だ。

そして、大龍脈とはその龍脈を束ねる核のような物で、いくつかがこの星の各地に点として存在している。

龍脈だけならばたとえ傷付けたとしても、大龍脈が健在ならばある程度は問題ないが、これが大龍脈を破壊したとなれば事情がまるで変わってくる。

バフォロスで砕いたのは大龍脈の半分だけだから今は問題ないとは言え、何もせずにあと3日も放っておけば、この星は砕かれた大龍脈から溢れた力の奔流によって、瞬く間に死の星へと変わっていくだろう。

現に今は力の暴走などは無いが、気温や天候などが大分おかしな事になっている。


「取り敢えずアルシア。フェンリルとフレスで露出した龍脈を埋めていくから、アタシとアンタは今の内にバフォロスと鎖を使って大龍脈の応急処置!いいわね!」

「………えぇい!あんなもん使うんじゃなかった!」


俺はバフォロスで平原を焼き払った事を後悔しながら、ニーザと共に大龍脈の応急処置を始めたのだった。

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