第24話「複製死体」
「取り敢えず、転生魔法に関しては可能性が一番低いと思う。だから、俺としては考えられる可能性はあと2つ。誰かが蘇生させるか、マグジールの
「デッドコピー……ですか?聞いたことの無い単語ですけど………。」
アリスは耳慣れない単語を口にしてから、フリードと、遅れてやってきたディートリヒに視線を向ける。
が、2人とも知らないらしく、頭を振った。
「伝わってないならいい。俺らの時代でも外法扱いだったからな。確認するが、魔族の生まれる原因は覚えてるな?」
「はい。浄化された魂から零れ落ちた負の感情が集まって生まれるものですね。」
「そうだ。複製死体は、魔族の発生を防ごうとして作られた術だ。」
「魔族の発生を………防ぐ?」
「死者の身体を複製し、本来魔界に行くべき魂をその肉体に移し替えて現世に留める……、そういう事ですかな?」
説明をしようとするが、ディートリヒが先に口を開く。正解だ。
「やっぱり凄いな、先生。殆ど何も言ってないのに。」
「はっはっは。複製死体、そこに加えて魔族の生まれる原因などと言われれば、答えを言ってるような物ですよ。」
「それでも、だよ。さて、先生の言う通り、複製死体……デッドコピーはそうやって新たな魔族の発生を防ごうと、ヴォルフラムによって開発が指示された。………当然の如く失敗したがな。」
「どんな風に失敗したんだい?」
「たしかに、肉体の複製は成功した。だが、魂の移動、回収なんてのは当時の技術では到底不可能だったんだ。結果、中途半端に対象の生命を複製した魂が肉体に入り暴走。周囲の魔素、制圧に来た城の魔導師や兵士を取り込んで暴走し、特級魔族が生まれた。」
「………その後は?」
「その後、城は半壊。城下に出てきた所をたまたま居合わせた俺と、中途半端とはいえ、複製された生命を感知して事態の全容を確認しに来たフェンリル達でこれを討伐。そのまま4人でヴォルフラムの所に行って、禁術指定にして封印しろと脅して帰ってきた。」
「クソみたいな国王だね。」
フリードが失敗の詳細を聞いてくるので、俺は当時の事を事細かに説明すると、フリードは他種族との外交の苦労も込みで汚い言葉で罵った。
こればかりは本当にそう思う。市民にも被害が出たし。
「さすがの奴も、事態が事態だったんで即座に禁術指定にしていたよ。だからそれを使ったんじゃないかと思うんだが……、自分で言っといて難だが、これもこれで無理があるんだよな……。大規模侵攻で失われた可能性が高いし、そもそも別の理由でその線は薄そうだ。」
本当に自分で言ってアレだが、複製死体は複製死体で可能性が低い。
「生命の循環の話、ですよね……?」
「うむ。一度死んだ魂はグレイブヤードで浄化され、そこから輪廻の輪に加わる。その浄化の過程で魂は無色……つまり元の人格なども洗い流されるのじゃ。複製死体の生命とは複製元の肉体に残っていた魂の残り香から生まれた物……。奴の死体を2000年もの間、綺麗に保管してでもいなければ、当時のマグジールの様な魂を持ったデッドコピーは作れぬ。」
アリスの問いにはフェンリルが答えた。
それに続いて、今度はニーザが口を開く。
「そもそも、何か違法な形で生命が作られた場合、それが劣化コピーであってもアタシ達はすぐに分かるようになっている。アンタ達が寝ている間、アレが作られた形跡は無いわ。」
「だよな………。」
俺は大きく肩を落とす。
奴が出てきたことで、何か事態に進展でもあるかと思ったが、余計に分からなくなっただけだ。
俺は空いてるソファーにドカリと身体を沈める。
「まったく……俺とフェンリルが寝てる間に何があったんだよ……。」
「あの……、アルシア。まだ何も分かってない中、こんな事を聞くのもどうかと思うんだけど、聞いてもいいかい?」
俺がこめかみを押さえて悩んでいると、唐突にフリードが申し訳無さそうに聞いてくるので「別にいいぞ。」と返す。
この際、気分転換になるなら何でもいい。
「さあ、聞きたいことを言うがいい。フリードリヒ・フォン・カーラー。どんな質問もこの災い起こし、アルシア・ラグドが幾らでも答えてやろう!!」
「いきなり何でそんな偉大な人みたいな口調になったんだい!?いや……まあ、いいや。なら一つ……。」
フリードは軽く咳払いして、真面目な顔で一言。
それも、この部屋にいて、この時代に生きる全ての人達がどこかで思っているであろう事を口にした。
「そもそも、どうして君達は2000年も眠り続けていたんだい?」
「…………………。」
フリードの質問と同時に、魔界を統べる偉大な高位魔族3人が白い目で俺を睨んでくる。
………どうしよう。
当たり前の様に答えたくない質問が飛んできた。
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