第3章「大規模侵攻終結後の話」
第23話「マグジールの謎」
スノーヴェール雪山から帰還して翌日。
俺達はスノーヴェール雪山で起きた事を全員に詳しく話した。
「マグジールが生きておっただと?」
「……それ、本当なの?」
「本当だ。あの感情の剝き出し方、幼稚さは間違いない。」
マグジールが生きていたという事に驚いてる2人に俺はそう返した。
少なくとも、俺に変なコンプレックスを向けている人間は知る限りヤツ以外心当たりが無い。
「………話に割って入って申し訳ないけど、彼は君達の時代の人間だろう?なら………」
「そう。本来なら死んでるはずだ。生きてるはずがない。」
だからこそ、そこが引っ掛かる。
何故奴が生きているのか。
あれが本当に本人だったとしたなら考えられるのは………
「妾達と同じ様に封印、とかか?」
「あり得なくはないが、それなら奴はいつ目覚めたんだ?少なくとも、俺達は誰にも2000年も眠るなんて言ってないぞ。」
「不老不死とかはどうだろう。それなら可能性としてはあるんじゃないかな?」
「………するかな、アイツは?」
「私達はマグジールとそこまで交流は無いから何とも言えないが、意味なくやる様には見えないな。」
フリードの言う可能性に、俺がフレスにそう聞くと、フレスは俺と同じ所感を述べて首を振った。
「………ニーザ。俺達が眠った後、外の世界で俺の生死はどうなっていたんだ?」
「アンタとフェンリルは死亡した者と扱われてたわよ。アタシ達も姿を偽って魔族狩りをしてたから、たぶん同じ扱いじゃないかしら。」
「ふむ……。」と一人、思案する。
そうなると俺に逆恨み目的で不老不死になったとは考えにくい。
それに………
「勇者とはいえ、ただの人間が不老不死になった程度で2000年も過ごせるかと言われると……」
「無理じゃな。妾達と人間とでは時間の感覚があまりにも違いすぎる。老いることも、死ぬことも出来ぬ2000年の時間など、人間からすれば死よりも苦しい拷問でしかない。」
フェンリルの言葉に頷く。
その通りだ。魔族や特定の種族にとって、例えば100年はあって無いような物だが、俺達人間からすれば、生きてるかどうかも怪しい。場合によっては永遠に思えるような長さだ。
そんなのが2000年も死ぬことも出来ずに続くなど、考えるだけでも頭がおかしくなりそうだ。
「じゃあ、不老不死は違う?」
フリードは顎に指を当てて呟くが、俺は「いや。」と返す。
「少なくとも、俺と同タイミングで封印から目覚めた、とかよりはまだ考えられなくもない。可能性からは切れないな。」
「アルシア。転生魔法とかはどうかな?目覚めるタイミング云々はともかく、それならまだ可能性はありそうだけど……。」
フリードの言葉に俺は首を振る。
残念ながらそれはあり得ない。
「あの時代で転生魔法なんて超高難度の魔法を使えるのは、俺とフェンリル達、ロキやスルトくらいだ。魔法に関しては素人のマグジールではまず式を作ることすら出来ないし、高ランクの魔導師達が揃って転生魔法を構築しようにも……」
「……そっか。大規模侵攻で城の魔導師達も出払って殆ど死んでるから、アルシアがいなければ作れないか……。」
「そうだ。他の種族なら出来るかもしれんが、ヴォルフラムは魔族どころかそれ以外の種族にも喧嘩を売っていた。まず手は貸さないよ。」
ヴォルフラムは魔族やドワーフ、巨人族などの他種族にもどうしてか喧嘩を売っていた。
その為、彼らはファルゼア王国を嫌っていたし、その国の勇者であるマグジールの事も嫌っていたのだ。
協力するとは考えにくい。
「彼らと外交を結ぶのに苦労したのは、そういう経緯があったからなのか……。」
余程苦労したのだろう。
フリードが全員に分かるくらいにその顔に怒りの感情を滲ませた。
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