番外編「歩く武器庫」

誰が強いかという議論のあと、フェンリル達は城下町に遊びに行ってしまい、3人とも不在の中、ある事を思い出した。


「そう言えば、フリードから何を貰ったんだ?」

「はい………コレです。」


アリスはそう言って、恐る恐る両手を差し出した。見ると両手首に魔石と術式が埋め込まれた銀色のブレスレットが巻かれていた。


「術式から見るに、専用の収納魔法か……。ただ、何処に繋げてるんだ……?」

「それが……その………」


アリスは冷や汗をダラダラと流して本当に答えにくそうに視線を逸らした。

……もしかして、異性が聞いては駄目だった質問だろうか?

そう思って謝罪しようか悩んだ時だ。


「この城の宝物庫だよ。彼女専用のね。」

「フリード?」

「アルシアの見てわかる通り、それは特定の空間と空間を繋げる特殊な魔道具でね。宝物庫にあったんだけど、使い道が無くて困ってたんだ。でも、アリスにピッタリだとおもってね。城の大部屋2つを急遽空き部屋にした後、壁をぶち抜いて、かき集められる限りの彼女が使う魔道具や杖を詰め込んでるんだよ。消費した魔道具、杖はこっちで逐一補充するから、今ある分だけでも君達が体験した大規模侵攻クラスの事でも起きなきゃ使い切れないんじゃないかな?」

「どれくらいあるんだ?」

「大体合わせて1000くらいかな……。大昔に使われないまま死蔵されてるものから、使う予定のない物とか、その他色々集めたからね。」

「………そりゃあ、アリスもこんな縮こまる訳だ。」


要するに、国王直々にアリス専用の武器庫を貰った訳だ。それも城の内部に。

しかも部屋に詰め込めれる限りと来たのだ。

彼女が今まで気にしながら戦っていた物資不足などを気にする必要もない。

俺でも流石にそんな事をされれば辞退を申し出る。

だが、フリードはそんな事を気にする事なく口を開いた。


「これは先行投資だからね。」

「先行投資?」

「そう。将来は王宮で働いて欲しいんだ。他に取られないように今の内に、ね?」

「家族にも費用や家なども用意するから、王都で暮らしてはどうかと話をされてるみたいで……」


……うん、大分本気だな、これ。

フリードはいたずらっぽく笑っているが、目は何処までも本気だし。

アリスの反応を見る限り、彼女のご両親も乗り気なのだろう。


「まあ、悪い話じゃないから良いんじゃないか?」

「ほら、アルシアもそう言ってるし。」

「それは………そうですけど。」

「なんて言うか、歩く武器庫だな?」


今まで彼女を苦しめていた武器の問題、制限されていた力のコントロール。

それが無くなった彼女は鍛えれば今まで以上に強くなるだろう。

加えて千単位の武器や魔道具。

まさに歩く武器庫だ。

冗談っぽく笑って言うと「何て事を言うんですか!!」と、アリスはぷりぷり怒って俺の背中をバシバシ叩いたのだった。

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