第16話「強化魔族」

「強化魔族………、やっぱりその呼び方が妥当か。」

「その呼び方が一番しっくり来る。強いと言えば強いが、良くも悪くもそれだけだ。強さに関しては、な。人間に対処出来る魔族もいれば、対処出来ない魔族もいる。」


俺が呟くと、隣にいたフレスがそう返した。


『強さに関しては、か。問題はやはり数か?』

『そう。あとは……強いて言うなら連携も意識しだした事かしら。数が増えた事によって起きた事ね。』

『奴らが出てきたのはいつ頃じゃ?』


その問いにはフレスが答える。


「出てきたのは本当につい最近だ。せいぜい1年、2年前か。それまでは普通の魔族しか出てきていない。」

「探知は?」


俺の問いに、フレスは静かに頭を振った。


『一番厄介なのはそこなのよ。誰がやったのか知らないけど、上手く強化されてる。だって、何処にでもいそうな魔力パターンになる様に強化されてるんだもん。暴走魔族みたいに特徴的な違いすら出さないから、現地に行って確かめるしかない。アンタ達の方はあいつ等と何かあったの?』

「ああ、実はな……。」


俺とフェンリルは今まであった事を話した。

俺が寝ている間、アリスが強化魔族と戦っていた事。俺が目覚めてすぐにキングトロールに襲撃された事。ファルゼア城に人間に扮した魔族が潜り込んでいた事。

更に、探知魔法で割り出した魔力パターンの事なども含めて全てだ。


『……アタシらと掴んでる情報は同じか。』

「まあ、起きてまだ1週間と経ってないからな。元凶が目の前にいたら殴り倒したい気分だよ。」


寝起きで処理するには面倒くさすぎる話だ。

俺としては文句の一つでも言って、ボコボコにしてやりたい。


「そう言えば、グレイブヤードはどうなんだ?魔族の発生する地はあそこだろう?」

「真っ先に調べたよ。分かったのはあそこから生まれて、各々が各地に散った後にあの状態になっている。グレイブヤードで生まれた直後は何もおかしい事にはなっていないんだ。」

「グレイブヤードで生まれた直後は何もなく……」

『各地に向かった後にあの状態になる……か。』


俺とフェンリルは今までの話を頭の中で整理していく。

纏めるとこうだ。


俺とフェンリルが目覚める1、2年前に急に強化魔族が現れた。

ニーザとフレスは発生源であるグレイブヤードを調べるも、その時点では普通の魔族であり、発生した魔族が向かった先で強化魔族になっていく。


そいつらは理性を持ったまま2,000年前に近い強さを得た。

とはいえ、暴走魔族程強くもなく、そのせいで探知魔法には引っかかる程の特徴もない。

そして、恐らく意図的に調整している者がいて、そいつに関する情報が全くと言っていいほど無いこと。


「厄介だな……」

『そうね。でも、何れ分かるでしょ?強化魔族はあの大規模侵攻が原因で発生してると思う。

だけど、そこに繋がる情報が少なすぎる。

分からない事をいつまでも考えても仕方ないし、今日はもう寝ましょう?明日も早いんだし。』

『そうじゃな。アルシア達が戻るまでに、妾達もアリスを鍛えねばならんしの。』


いつまでも考えても埒が明かないと、ニーザとフェンリルが切り出して、そのまま通信を終わらせる。

たしかに、知りたいならばより情報を集めるしかない。


「私達も寝るぞ、アルシア。明日の夜には、この村でまた宿を取れるようにな。」

「ああ、そうだな。おやすみ、フレス。」


そう言って俺達も明かりを消して床に着いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る