第13話「高位魔族の出自とアリスの戦い方」

「フェンリルさん達が、神様の血を……ですか?」

「ああ。妾達が他の魔族と違って、特殊な生まれだというのは覚えておるな?」

「はい。御三方が魔王ロキ様と同じく、自然に生まれたものではないというのは覚えてます。」


アリスは高位魔族の生まれの話を思い出してそう答え、それを聞いたフェンリルは満足したように頷く。


「そうじゃ。妾達はロキを支える為に神によって作られた。故に、神の力が少しだけ流れておる。神術の使い方も心得ておるから、安心するがよい。」

「そうそう。ろくすっぽ下界に降りてこない神なんて役に立たない連中より、よっぽどアタシ達の方が役に立つんだから、任せなさい?」

「神様に………作られた?」


生まれの事を何でもないと言わんばかりにしれっと話すフェンリル達にアリスがいよいよ理解が追いつかないとばかりに混乱した。

まあ、俺も最初に聞いた時は驚いたが、アリスの場合はそれに加えて……


「………神の血を引いた高位魔族3人の弟子……か。君の生徒は凄いね、ディートリヒ。」

「はい……!彼女の力が改めて再評価されるのも喜ばしい事です。これはもう……協会に乗り込んで、プリーストから枢機卿カーディナルにする様、掛け合わねば……!」

「やめてください、先生!?」


その後…アリスの抵抗も虚しく、フリード協力の下、本当に数ヶ月後にカーディナルになる為の試験が組み込まれてしまった。




◆◆◆


「ところで、アルシアさん。神術を使うとなると、今までの戦い方は止めたほうがいいんでしょうか?」

「それなんだがな……、俺個人としては止めなくていいと思う。」

「いいんですか?」


「ああ。」と頷き返す。

アリスにイブの聖杖を渡す際、最初は止めさせようかとも考えた。

しかし、アリスのこの戦い方は完成されすぎていて、ここでそれを捨てるとなると、それはそれで勿体無い。

それに、神力と魔力が混ざり合ったあの状態の魔法でも、アリスの使う魔法の威力はその辺の魔導師のそれより上だ。

ならばだ。


「アリスはそもそも、元の基礎が出来ている。なら、神力と魔力を別々に使える様にトレーニングして、今までの……暴走魔法とも言うべきか。それも戦術に組み込んでいけばいい。」

「出来るでしょうか?」

「暴走魔法は今まで通りの感覚でやればいい。通常の魔法に関しても、神力と魔力をしっかりと分ければ、暴発をせずに本来の威力を出せるはずだ。そっちは、少し慣れるのが大変かもしれんがな?」

「ねえ、アルシア?リアドール君の魔法って、あれで最大出力じゃないのかい?」

「うん。魔法に神力が干渉して40%くらいしか出てないな。」

「ホーリーストームがリアドール君の本来の力で撃たれたら、その………。」

「………間違いなく消し飛ぶな、この城。」


「全力だぁ!」と、先程の戦いの前に叫んだ事を思い出す。

今更になって、俺はとんでもない事を言ったのだと自覚した。


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