第12話「神術の仕組み」
「ああ。神術で使うのは自分の神力だけ。術式は存在しない。」
俺の言葉にフリード達は眉根を寄せた。
魔法の仕組みを知っていれば、無理のない反応だろう。
「……僕も重力魔法を使うけど、術式と魔素が無ければ形にならないよ?」
「魔法ならそれで正解だ。術式を展開して、自分の魔力と魔素を混ぜ合わせて魔法を作り出す。これが俺達が普段使ってる魔法だが、神術はそもそも、予め一つの術として出来上がってるんだ。言ってしまえば、神の力を借りて、それをそのまま降ろしてきて術として使う。これが神術の正体だよ。」
簡単に説明したが、スケールが大きすぎて全員固まってしまったので、俺はアダムの書を身体から出して、クロノスの力を使う準備を始めた。
「空間隔離の神術を使う。ゆっくりやるから、皆よく見ててくれ。」
そう言ってから、俺は空間隔離の神術をゆっくりと発動する。
すると、それは魔法ならば本来通るであろう手順の全てを無視して、いきなり展開されていった。
「………本当ですね。術式の展開もしませんでしたし、神力が形を変えたようにも見えませんでした。」
「アリスはまず、さっきの杖を使う戦闘もそうだが、魔力と神力を切り離して使うところから練習していこう。幸い、ここに神術が使える高位魔族が3人もいるんだからな。」
そう言ってフェンリル達を見た時だった。
「ところでさ、アルシア。」
「何だよ、ニーザ。」
「何で神術の実演でアタシを空間毎隔離すんのよ!!」
「………ちっ、バレたか。」
「何をどうすればバレないと思ったのよ!頭に噛みつくわよ!?」
ギャーギャー煩いので、取り敢えず解放してから3人を見やる。
「頼めるか?アリスの面倒を見る間は、調査もあるから俺が魔族狩りに行くし。」
「まあ、そう言う事ならいいわよ。アリスの事は任せときなさい。」
「ま、待ってください!神術の稽古はアルシアさんがつけてくださるんじゃないんですか!?」
アリスの焦ったような質問に、俺は残念さを隠すこともせず、頭を振る。
本当にこればかりは俺では出来ないのだ。
「前にも言ったかもだが、俺は神術を使えないんだ。アダムの書を通して、記録されている物を使えるだけ。今みたいな説明を出来ても、基礎的な練習に関しては神術を使えるフェンリル達を頼るしかない。」
フェンリル達も、任せろとばかりにこちらを見て微笑んでいる。
少なくとも、彼女たち以上に適任はどこを探してもいないだろう。
「でも、フェンリルさん達は魔族ですよね?神術って使う事が出来るんですか?」
「問題ないぞ、アリスよ。」
俺が答える代わりに、フェンリルが歩み寄りながら答えた。
これは彼女達の出生に関わる出来事なので、俺よりも本人達が答えたほうがいいだろう。
「………フェンリルさん?」
「妾達に任せよ、アリス。我ら高位魔族は3人とも、神の血を引いておるからな。」
フェンリルの言葉に、アリス達は目を見開いて驚いた。
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