第11話「アリスと神術」
「私が神力を……?」
「そうだ。今のアリスは魔力と神力が混ざり合ってる。基本的にこの2つは反発し合う性質を持っているから、混ざり合った状態で魔法の行使を行えば………」
「反発し合って術を発動した杖が壊れると……?」
ディートリヒの言葉に、俺は頷いた。
「肉体に付与する場合は本人の身体を媒介にしてる関係上、そこまで負荷は掛からないみたいだがな。自分の身体ではないもの……、それこそ杖とかを媒介にしたり、付与したりすると暴走してあんな現象が起きる。アリスは光魔法とかをメインに使っているから、判別のしにくさに拍車がかかってるんだろう。力の性質が神術と少しだけ似てるのもあって、俺も実際にニーザと戦ってるところを見なければ分からなかったよ。」
「でも、どうしていきなり……」
アリスの言葉に俺は「うーん……」と唸る。
どこまで話すべきだろうかと。最後にアリスが使おうとしたあの技から感じた気配は間違いなく、アレだったのだ。
少しだけ考えて、フェンリル達を見て、俺は念話で聞く事に決めた。
『まだ教えない方がいいか?』
『そうじゃな。自覚したところで、どのみち神力からどうにかしなければならん問題じゃ。だから、今はまだいい。』
『おっかない物には違いないけど、今のアリスはまず基礎からどうにかしないといけないもんね……。あと、今教えたら気絶しそうだし。』
『私も賛成だ。今はまず、神力をコントロールし、通常の魔法を使えるように矯正するのと、神術を習得するのを優先するべきだろう。』
やはりと言うべきか、考えは皆同じだった。
俺はそこで念話を切り、アリスに向き直る。
「………神力ってのは、発現の仕方は人それぞれだ。何かに触れたのが原因で発現するパターンもあれば、そういうのも無く突然変異で発現したり、元々、そういう素養があって発現する事もある。」
「決まったパターンっていうのは無いんだね。」
「ああ。と言うより、アリスみたいなパターンが多いんだ。急に神力を発現して、戦い方が合わなくなったから気付かないまま他の職業を選んだりするパターンが。その場合、近接戦闘なんかの職業を選ぶ事が多い。さっきも言った通り、神力を自分の身体で行使してるせいか、負担は少ないんだ。寧ろ、武器を媒介に魔法を行使する方が負担が大きいって聞くからな。」
神術、神力に関しては不明な点が多い。神の力と名が付くように、使い手があまりにも少ないし、いても死ぬまで気付かない人も多い様なのだ。教える者も、気づく者も居ないというくらいに。
フリードの問いにこう返すと、心当たりがあるのか、アリスは「言われてみれば……」と零した。
「さっきの、光魔法と神術が少しだけ似てるっていうのは、どういう意味ですか?」
「光魔法は神術の力を型落ちさせて、一般の魔導師が使えるレベルにサイズダウンさせた、という話がある。実際問題、光魔法はそういう意味では神術で発生する現象と似ている。」
「違うのはどの辺なのですか?」
「うん。光魔法……と言うよりも、俺達が普段使ってる魔法は、自分の魔力と大気中の魔素、術式を組み合わせて発動させている。だが、神術の場合は使うのは自分の神力だけなんだ。」
「術式も魔素もいらないんですか?」
全員が俺の言葉に驚いた様な顔をしたので、肯定の意味を込めて頷いた。
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